少年陰陽師

□書簡庫
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書簡庫




「…なんだ?」

陰陽寮の端にある書簡庫。壁面にある棚には、沢山の書物や巻物が収められているその部屋に、一匹の物の怪と一人の少年がいた。

部屋の北方についている明かり窓からは、なにやら人の叫び声が聞こえてくる。


「なにかあった!?」



書簡庫で記録書などを読んでいた少年昌浩は、窓から聞こえてきた叫び声に立ち上がった。
妻戸を開け簀子に飛び出ると、瞳に映ったものは黒い煙。

「…火事だな」


少年昌浩からは「もっくん」と称されている物の怪。
大きな猫でも犬でもないような姿形をしている物の怪は、冷静に言葉を発する。

「見りゃわかるっ」


誰が見ても一目瞭然のことを言われ言い返す。

「だが、ただの火事でもないようだ」
「え?」

「火の手が上がっているのは、多分清涼殿から後宮にかけてだな。……まだ明るいこの時間に灯篭でも灯したのか?」


まだ…明るいのに……?

今は夏の盛り…。日が落ちる頃とはいえ、まだ明るい。
この時間帯に照明を点ける必要はないはずだ。






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