短編

□一人ぼっちの小窓から
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「ねぇねぇ猫…、黒は?」
「さぁな。銀にでも聞いたらどうだ?」

そっけない猫のことばに頬を膨らませた。わたしが銀を苦手に思ってることしってるくせに…わざとこう言うんだ。
いや、苦手意識とはちょっと違うかもしれない。苦手というより、単なる嫉妬からくるあれだ。敵対心ってほどではないけれど、嫉妬からくる羨望とでもいうのか。わたしが勝手に銀から一歩引いてるだけ。

悲しきかな恋する乙女の性、まわりにわたし以外の女の子といえば銀しかいないから意識してしまうのだ。黒は銀が好きなのかな…とか。

銀は黒によく守られてるし、銀も黒に心を許してるような気がする。ドールに心があるのかと聞かれればなんとも言えないけど、彼女は他のドールとなにかが違うから。そういうこともあると思う。



「黒…」

黒は銀のことが好きなのかな。契約者は自分の好き嫌いで物事を考えない、自分の口に合わなくても身体に必要な栄養なら合理的に考えて食べる。すべての物事を自分に有益か無益かで考える契約者は、人を好きになったりしないだろう。その感情は無益だと判断してしまうから。

だけど、黒はいままで会ってきた契約者とは違った。彼にはきっと感情がある。彼の無表情の隙間にわたしは喜怒哀楽を見たからわかる。彼にはきっと他の契約者にはない感情があるはずだ。



それ(感情があること)を知っているから、黒が銀を好きな可能性もゼロとは言えない。

黒は認めないだろうが、少なくとも銀に好意はよせてるはずだ。

だから醜い嫉妬をして、彼女を羨望の眼差しで見てしまう。







あーあ、どろどろ考える。銀に聞くこともできない私は悶々といろいろ考えてしまう。

黒、黒、黒、いまどこにいるのかな。つまんないつまんないつまんないつまんないよ。黒がいないと楽しくないんだ。
余計なこと考えちゃって、自分じゃどうしようもないんだ。あなたは今どこにいるんだろうね?








(ひとり貴方のことを)
(想うのです……)






…悲恋ではないけれど、1人で結論づけちゃってる独りよがりな女の子の話。

お題提供『ace

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