フリリク
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「着いたぜー、団長」
水の星、地球。
侍の国……いや、天人に乗っ取られた星、地球。
「やっと着いたか」
何がそんなに楽しいのか今日も団長は笑っている。笑ったまま地球に足を踏み入れた。
「とりあえず腹減ったな。どっかで腹ごしらえでもしようよ」
「んな暇ねェよ。大体、船内でさんざん腹こしらえたろうが」
「俺に歯向かうとは、随分と偉くなったもんだねェ、阿伏兎」
団長は笑みを浮かべたまま言う。
…やばい。
「わかったよ。なんとかすっからここで待っててくれ。動かんで下さいよ?」
「わかったわかった」
食欲のために殺されるなんざまっぴら御免だ。
俺は自分の命を優先した。
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阿伏兎と別れた神威はある噂を耳にした。
―強い女がいる。
女だてらに強く生きている。しかもまだ若い、子供のような…。
おもしろそうだ、と思った神威はさっそくその女のもとへと足を運んだ。
阿伏兎との約束など頭に残っていなかった。
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『…誰あんた?』
目の前の女は言う。
噂通り、まだ若く思っていたより幼い。
「この辺に強い女がいるって聞いたんだが…、ガセだったかな?」
『強い女…
私のこと?』
「…本当に?」
自分を強いと言う女。やはりこいつが噂の女なのか、と少し驚いた。
『うん。結構強いと思う!この前はこの地区のガキ大将に泡ふかしたし!』
「……」
『その前はこの辺を荒らしてた泥棒やっつけたし!』
「…あんたほんとに強いの?」
『なっ…、強いよ私は!ほら!!』
女は懐から取り出した小さなノートを開いて見せた。中には字体の違う名前がびっしり書いてある。
「何コレ?」
『今まで倒してきた相手のサイン!』
「……」
『ね!?強いでしょ?お兄さんなんか瞬殺だよ!』
「ふーん。そこまで言うなら手合わせ願おうかな」
『ふふんっ。いいわよ!じゃあいく――』
―ゴトリ、
『…あれ?』
一瞬だった。
痛みを感じる暇もない程に、女の左腕は一瞬で吹っ飛んだ。
「あーあ。吹っ飛んじやったね。大丈夫?それ」
『ず、ずるい!いきなりすぎだよ!まだ“よーいドン”言ってないじゃない!』
「残念なことにそんなルール俺の前では皆無なんだよ。
それよりなんか泣きそうじゃない?死んじゃうじゃない?」
『ば、バカにしないでよ!これぐらい大丈夫だもん!舐めときゃまた生えてくるもん!』
「俺の部下にも腕を吹っ飛ばされた哀れな奴がいるんだけどね、残念ながら生えてこなかったよ」
『生えてくるもん!そいつはアレ…アレだよ!栄養が足りなくて再生力がなかったんだよ!』
「見苦しい女だな。御託はいいからさっさとくたばっちゃいなよ」
『なっ、何をををを!』
女は再び神威に向かおうとした。が、
「へぇー、まだ来るんだ?もう一本もなくなっちゃうよ?」
『!!』
戦闘体制になった神威を見て女はピタリ、と止まった。