フリリク

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「着いたぜー、団長」




水の星、地球。



侍の国……いや、天人に乗っ取られた星、地球。




「やっと着いたか」



何がそんなに楽しいのか今日も団長は笑っている。笑ったまま地球に足を踏み入れた。



「とりあえず腹減ったな。どっかで腹ごしらえでもしようよ」

「んな暇ねェよ。大体、船内でさんざん腹こしらえたろうが」

「俺に歯向かうとは、随分と偉くなったもんだねェ、阿伏兎」




団長は笑みを浮かべたまま言う。





…やばい。




「わかったよ。なんとかすっからここで待っててくれ。動かんで下さいよ?」

「わかったわかった」



食欲のために殺されるなんざまっぴら御免だ。


俺は自分の命を優先した。



―――――――――――



――――――――



阿伏兎と別れた神威はある噂を耳にした。



―強い女がいる。
女だてらに強く生きている。しかもまだ若い、子供のような…。




おもしろそうだ、と思った神威はさっそくその女のもとへと足を運んだ。
阿伏兎との約束など頭に残っていなかった。




**




『…誰あんた?』



目の前の女は言う。
噂通り、まだ若く思っていたより幼い。



「この辺に強い女がいるって聞いたんだが…、ガセだったかな?」

『強い女…


私のこと?』


「…本当に?」



自分を強いと言う女。やはりこいつが噂の女なのか、と少し驚いた。



『うん。結構強いと思う!この前はこの地区のガキ大将に泡ふかしたし!』

「……」

『その前はこの辺を荒らしてた泥棒やっつけたし!』

「…あんたほんとに強いの?」

『なっ…、強いよ私は!ほら!!』



女は懐から取り出した小さなノートを開いて見せた。中には字体の違う名前がびっしり書いてある。



「何コレ?」

『今まで倒してきた相手のサイン!』

「……」

『ね!?強いでしょ?お兄さんなんか瞬殺だよ!』

「ふーん。そこまで言うなら手合わせ願おうかな」

『ふふんっ。いいわよ!じゃあいく――』







―ゴトリ、




『…あれ?』



一瞬だった。



痛みを感じる暇もない程に、女の左腕は一瞬で吹っ飛んだ。





「あーあ。吹っ飛んじやったね。大丈夫?それ」

『ず、ずるい!いきなりすぎだよ!まだ“よーいドン”言ってないじゃない!』

「残念なことにそんなルール俺の前では皆無なんだよ。
それよりなんか泣きそうじゃない?死んじゃうじゃない?」

『ば、バカにしないでよ!これぐらい大丈夫だもん!舐めときゃまた生えてくるもん!』

「俺の部下にも腕を吹っ飛ばされた哀れな奴がいるんだけどね、残念ながら生えてこなかったよ」

『生えてくるもん!そいつはアレ…アレだよ!栄養が足りなくて再生力がなかったんだよ!』

「見苦しい女だな。御託はいいからさっさとくたばっちゃいなよ」

『なっ、何をををを!』



女は再び神威に向かおうとした。が、




「へぇー、まだ来るんだ?もう一本もなくなっちゃうよ?」


『!!』




戦闘体制になった神威を見て女はピタリ、と止まった。                   
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