誕生日夢

□神威
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『阿伏兎君?何やってんのこんなところで』




夜の9時を回った頃、




家の近くのコンビニに来た私は思いがけない人物に出くわした。




「ああ、あんたか。あんたこそ何やってんだこんなとこで」

『私この辺に住んでるんだよ。阿伏兎君こそ何してるの?』

「何、ってここら一帯は俺らの縄張り(シマ)だからよ」

『……島?』

「…いや、なんでもねーよ」



何かを諦めたような顔つきで溜め息をつく阿伏兎君。




…なんで溜め息?












―ガシャアアアン!!



『!!』



いきなり派手な音がしたので反射的に振り向いた。



すると学生服を着た男の子達、数人が倒れている。





…何事?






「…くそっ!覚えてろよ!!」



一人の男の子がそう言ったのを皮切りに他の子達も慌てたようにその場から散らばった。





『……喧嘩かな…』

「…」



黙ったままの阿伏兎君。



と、コンビニの影から人が出て来た。





『え?』


「…やっぱりな」



出て来たのは神威君だった。





『どっ…どうしたの神威君!!』

「何やってんのおねーさん」

『君もだよ!!』



何故か神威君が驚いたような顔をしていた。




「この辺に住んでるんだとよ」

「ああ、そうなの」

『そ、そんなことはどうでもいいから!一体何があったの!?大丈夫なの!?』



さっきの不良の子達や派手な音といい…




神威君の身に何かあったんじゃ…






「大丈夫だよ」

『本当に!?』

「さっきのはアレだよ。誕生日パーティーしてたんだよ」

『パーティー!?』



いや、確かにパーティーばりの派手な感じだったけどさ




…それにしても…



なんであんな不良みたいな子達と神威君が…?







『…ていうか神威君、今日誕生日なの?』

「まーね」

『へーおめでとう』

「どーも」

『神威君ももう18歳かー…。人生まだまだこれからだね。精一杯生きるんだよ』

「おいおい。なんかオバサンみたいになってるぞ」

『いい?決して悪い人達とつるんじゃいけないよ?』



私は神威君に教師としての教えを説いてあげた。





それなのに神威君どころか阿伏兎君までが目を見開き驚いたような顔をしている。




しばらくすると神威君は笑った。




「大丈夫だよ。俺けっこう強いから」

『強がっちゃだめよ神威君。過信が一番怖いんだからね。やんちゃしたい年頃だろうけど、神威君みたいな子は家で本でも読んでなさい』

「おねーさんも気をつけなよ。そんなに生徒を見下してばっかだと後で大変な目に合うよ」

「お、おい止めとけよ?」




阿伏兎君は何故か焦ったように神威君を宥めていた。




『?、まぁ阿伏兎君がついてれば安心かもね』

「何?俺より阿伏兎のが強そう?」

『うん』

「…そうかい。ほんと不愉快な人だなあんたは」

「オイィィィ!!やめとけ!!あんたもこいつを煽んねェでくれ!!」

『?』



いつの間にか阿伏兎君の顔は真っ青になっていて必死だった。




まぁいっか





『ま、とにかく、未成年は早く家に帰りなさいね』

「おねーさんこそこんな時間に外出ちゃだめだろ?お家の人に怒られるぞ」

『…神威君、私もう22なんだ』

「へーそうなんだ。全然見えないね。よく言われない?」

『……』




涼しい顔で毒を吐く神威君。



私の口元がピクピクとひくつく。                 
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