こいぶみ

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ある日の日中。
山崎は万事屋の三人とファミレスにいた。


銀時だけに話があったのだが二人もついてきたのだ。

山崎の話を聞いていた新八が神妙に尋ねる。



「じゃあ、その芦屋さんて人が菊枝さんて芸妓さんを死に追いやったって事なんですか?」

「死においやったっていうか…まぁ芦屋に出会ってなければ彼女も死ぬ事はなかったんじゃないかな。物事は彼女が背負えるものじゃなくなっちゃったんだよ」

「…事件のにおいがするアルナ…」

「いやにおいというか事件だから。おもっくそスタートテープきってるから。ていうか君達は出てこなくていいから。ていうかなんで来ちゃったの。大人の事件だからねこれは」

「うるっさいアルナ。下の皮も剥けてないくせに何が大人アルカ」

「ちょ、なに言ってんの君。女の子がそんな事言っちゃいけないよ」

「銀ちゃんを見るアル。ずるっずるのずるむけボーイネ」

「ちょっとォォ!!旦那ァァァ!!」

「よし、行くネ新八!!まずは情報収集アル!!」

「うん!!」

「あ!!ちょ、待っ――」




久々のシリアス展開にテンションが上がってしまったのか新八と神楽はぴゅーっとファミレスを出て行ってしまう。
まぁいいやと山崎は座りなおし続ける。




「さっきの芦屋って奴なんですが実は、芦屋の馴染みになった芸妓がこれまで何人か死んでるんです」



新八と神楽が出て行ったのを気にも留めずパフェを食べていた銀時はスプーンをぴたりと止める。




「菊枝さんが死んで、今度また新たに動き出すと思うんです」

「まるでホラーだな。人が次々と呪われていくみたいな?」

「冗談言ってる場合じゃないですよ旦那。だいたい吉原には自警団なるものがいるじゃないですか。ちゃんと機能してるんですか?」

「俺に聞くなよ」

「そんな事行って知ってるんですよ。旦那が吉原の救世主様ーとか言われてるの」

「お前、性格悪いね。だからってんな奇怪なものに俺達を巻き込むなよ」

「あの二人は知りませんよ。オレ呼んでないし。別に巻き込むつもりはありませんが、吉原で聞き込みすると女達がこぞって旦那の名前出すんですもん。いったいなにもんなんですかあんたは。金もないのに」

「ヒーローはなァ、金がなくってもできるんだよ。あーそれより沖田は?あいつはどうしてんの?」

「隊長ですか?隊長なら今回の事件の調査中ですよ」

「そうじゃねーよ。ほらいたじゃん。お鈴ちゃん。あれから進展してんの?」

「なんの進展?期待したって無駄ですよ。隊長はなんとも思ってませんて。そもそもあれから会ってもいないんじゃないですか?」

「……」



銀時は窓の外を見た。
「吉原…か」と小さく呟く。


すると「銀ちゃん…」と声がした。銀時と山崎は同時に振り向く。

そこにはぼろぼろの神楽と新八がいた。



「何してんの」

「吉原に聞き込みに言ったネ。でも私達入ろうとしたらどっかからドッカーンてやつ飛んできたアル」

「どっかーん?」

「どっかにスナイパーがいるネ。一歩も近づけないアル」



銀時と山崎は顔を見合わせた。

銀時はフッと笑う。



「こりゃまたえらい仕事熱心だな、野郎は」



―――――――――――


――――――



ここ数日の間に、いろんな人に出会った。
いや、花街で毎晩いろんな人間に出会うお鈴にとっては、新しい出会いというのは珍しい事ではない。日に日に指名が増えて行くお鈴はしょっちゅうだ。

しかし客ともいえない、日常的で意味のある人物。そのような人間にはそう毎日出会えない。
お鈴はここ数日の出来事には深い意味のあるものだと思っていた。


とはいえ、沖田に会えない日々が数日続いた。最後に会ったのはあの夜、山田の指名を受け仕事に出向こうとしたら沖田が置屋の近くをうろついていた、あの夜以来だ。

お鈴を案ずるような言葉を残し、何かを抱えたような顔で去って行った。
あれはどういう意味だろうかとお鈴は考えた。
菊枝の事だろうか。警察の者だ。当然知った事だろう。
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