†FreeButterfly†

□〜序章〜
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初めまして。俺の名前は、まぁ諸事情があるんで「高橋健一」で覚えてくれ。本名じゃないんだけどな。芸名なんだ。

実はこう見えて俺は芸能界に生きる、所謂「有名人」ってやつだ。知ってるだろ?月9と言えば今や俺に並ぶ俳優なんか居ないからな。


今からする話は俺がまだ駆け出しの役者だった頃。今の地位を手に入れるきっかけになった話。ファンにだって知られていない話だ。

え?何故話す気になったかって?頃合いだと思ったからさ。いや、こっちの話。





あれは、秋が近付きちょうど街を行き交う人たちの服装が夏冬入り交じっているような。そんな日だったように思う。

俺はその日お台場にある名所の一つ、フチテレビでの収録がありスタジオに入っていたんだ――――――。















「お疲れ様でした〜〜」


スタッフに声をかけて健一はスタジオを後にした。端役とはいえドラマの収録は体力を消耗する。健一は大きく一つ、溜め息を付いた。

扉の前で佇む男。スラリとした体躯に柔らかな色合いの茶髪。精悍な顔には太過ぎず細過ぎない理想的な眉と実に男らしいこげ茶色の瞳。薄い唇をキッと一文字に引き締めているその姿はなるほど、テレビ局のスタジオ前という特殊な場所に良く似合っている。
彼、高橋健一は駆け出しの、云わば俳優の卵だ。最近やっと端役が回ってくるようになり軌道に乗り始めたという状態。
何もかもがこれからで、やっとスタートラインに立とうとしているのだ。さぁ事務所に帰ろうか。そう考え歩き出した視線の先に一人の女性が立っていた。





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