†FreeButterfly†
□〜第ニ章〜
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「やられたっつう気持ちで一杯ですがね」
有りったけの皮肉を込めて健一は言うが、
「あら心外ね。私は“相手役が居る”と言ったのよ?嘘は何処にも無いわ」
とあしらわれた。やはり健一に言葉で相手を負かすという荒業は難しいようだ。
カイの方はと言うと「オレ何も聞いてへん」と少し拗ねた素振りを見せている。
まぁ良いじゃない、とマネージャーはカイをあやすように微笑んだ。健一はその対応の違いにちょっと気が滅入った。
「それよりも良い?二人とも。貴方達に残された時間は今日を入れて四日しかないのよ」
真面目な表情に戻りマネージャーは二人に向かって四本の指を立てた右手を差し出す。
分かってるよと健一は頭を乱暴に掻き、カイも何度か目を瞬かせてから
「四日で台詞覚えたらえぇんやろ?大丈夫やでぇ」
と至極簡単そうに笑ってみせた。それを見てマネージャーは頼もしいわね、と微笑んでいるが健一は溜まったものではない。
何せそれには事務所の命運だとか、赤い絨毯だとか、自身の未来だとかいうものが掛かっているのだ。
「お前ね。歌詞とかと一緒にしてねぇだろうな?そんな訳にはいかねぇんだぞ!?」
「ふ〜んだ。思ってへんも〜ん」
言い合う二人を懲りずに数枚激写してからじゃあ頑張ってね、とマネージャーは出て行った。むしろどうやって入ったのだろうか。
それが愚問である事を健一は思い出した。このマンションは映東の用意した場所なのだ。
「さて、こうしてても始まらねぇや。本読みしようぜ」
そう言って振り向いた健一は、また寝ようとしているカイの姿に呆れかえりながらも必死にまた起こす羽目になるのであった。
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