セイリンと星

□セイリンと星
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ある朝、窓辺に座っていたメイリンが、何かを思い出すかの様に、ぽつりと独り言を言った。

「あの星を一つでも捕る事が出来たら、なんでもうまくいくような気がする…。」


昨日はこの街あげての星祭り、家族揃っての朝食は賑やかで、弟のセイリンはバタバタと階段を下りてくると、元気よくドアを閉めた。

それから2日後、突然メイリンは倒れた。

セイリンと一緒んなって、元気にはしゃいでいたメイリンの姿は今は無く、ベットの上で微笑み、周りに「大丈夫」と言うのが口癖になっている。

しかし、辛くないはずはない。
ベットの上に寝たきりで起き上がる事さえも自分ではできないのだから…。

そんなある日の夜。
セイリンは突然トイレに行きたくなって起きた。

メイリンの部屋の前に差し掛かると、声が聞こえた気がした。

しかし、その夜は風も強く、窓もガタガタと揺れ、気味が悪いと感じたセイリンは、早々に部屋へ戻った。

また何日かした夜。
セイリンは再びトイレにく為に起きると、やはり、メイリンの部屋の前で声を聞いた気がして、思い切ってメイリンの部屋へと歩み寄った。

トントン…。ガラガラ…。
「お姉ちゃん起きてる?」
恐るおそる声を掛けると、中から穏やかな声が返ってきた。

「起きてるよ。どうしたの?眠れないの?」
メイリンは夜遅くの訪問者にビックリしながらも、セイリンを心配した。

「トイレに起きたんだ。お姉ちゃんの声が聞こえた気がして!」とセイリンが元気よく話すと、メイリンは「星が見たいな〜と思って…」と話した。

セイリンは、メイリンが星が好きなことも知っています。倒れる前に見た星祭りの事星座の事など、時間を忘れて夢中で話しました。
星の歌をメイリンが歌うと、セイリンは大きなあくびをしました。

それを見たメイリンは「もう遅いわ。寝ましょう。」と、優しく声をかけると、セイリンは「おやすみ。」と眠くてトロンとした目を擦りながら扉を閉めた。

その姿を見送りながら、メイリンは小さな声でつぶやいた。
「あの星を、一つでも捕る事が出来たら、なんでも上手くいくような気がする…。」

到底捕る事なんてできないことも知っている。それでも、そんな奇跡の様な事が起こったら、何か良い方向へ向かうのではないかと、願わずにはいられなかったのだ。

セイリンは、扉の前で眠い頭でトイレに行くかどうかを悩んでいると、メイリンの声が聞こえた気がして、扉を見つめた。

お昼を食べたセイリンは川辺にいた。
何かを探している様子。
行き交う友達に野球に誘われても、サッカーに誘われても、笑顔で「今日はいい。また今度行く。」と断っては、地面や川を見ていた。

そこへ、親友のイサ君が来ました。
「何を探しているんだい?」
「…。」
「どうしたの?」
「ちょっとね…。」
「僕にも言えないこと?」
真剣なイサ君の顔を見て
「…お星様をね。探していたんだ。」
「…。メイに?」
セイリンが、小さく首を縦に振ると、イサは何も言わず、セイリンが居た所とは違うところを探し始めました。
「…ありがとう。」
イサは、鼻の頭を親指でこすると、照れくさそうに笑った。

すっかり遅くなってしましました。
ママの雷が落ちるのを覚悟しながら家に帰ると、ママは温かいスープを用意すると、「お帰り。ご飯にしましょう。」と優しく迎え入れてくれた。
セイリンは不思議でならなかった。
『いつもなら、怒られるのに…。』

釈然としなかったが、怒られるよりいいか…。と考え直すと、いつもの様に楽しく家族で食事をした。食事の時は、メイリンも部屋から出て、リビングで過ごす。パパにソファに降ろしてもらうと、ゆったりとTerを飲みながら、一日の事などを話した。セイリンの話は、もっぱらイサと遊んだことにしぼられた。

その日の夜も、親が寝静まった後、セイリンはメイリンの部屋を訪ね、本屋で見つけた星の本の話をしたり、昨日思い出せなかった星座の話をした。

次の日も、その次の日も、セイリンは早くから出掛け、夜は二人で星の話をしていた。

一週間が過ぎたころ。

いつものようにセイリンはメイリンの扉をノックした。

「いらっしゃい。セイリン。」
「メイリン。今日はプレゼントがあるんだ。」
「なあに?」

「目を閉じていてね。」
セイリンは、カーテンを閉めると、メイリンに小さな箱を手渡した。
「何が入っているの?」
「一緒に開けようか。」
うなずくメイリンの手を取って、ベットサイドの明かりも消した後、箱を開けると小さな光が、ふわりと宙に舞った。

「…お星様見つけたんだ。」
セイリンは、メイリンの目をまっすぐ見て言った。
「イサと一緒に探したんだ。」

「お星様…。…綺麗ね。」
メイリンは、とても嬉しそうに答えた。

「…。でもね。このお星様は、お空から取っちゃうと、長く光っていられないんだ。だから、いつまでも、メイリンがこのお星様を思い出せるよう
ママが「なんでプレアデスなの?」と、不思議そうに聞いたけれど、メイリンはにっこり笑顔でこう答えた。
「家族のようでしょ?たくさんの星が集まって、より輝きが増すなんて」
ママは、メイリンの手を握って「そうね。」と答えると、セイリンの作った星を見あげ、パパはセイリンの肩にそっと触れると、ママのように星を見上げた。

それからというもの、毎日のように夜にはメイリンの部屋に集まって、星の話をし、メイリンの調子の良い時は、外にも繰り出した。雨の降る日はセイリンの星を眺め、雪の降る日は、外に向かってライトを輝かせ、星が降っているみたいだと、笑いあった。

セイリンが、メイリンの部屋に行き始めて、1年がたった星祭りの7月7日、今日はメイリンの体調が思わしくない。もしかしたら、最悪の事も考えて…。と付け足して、医者は帰って行った。メイリンの一番楽しみにしていた日なのに…。と、セイリンは辛い気持ちでいっぱいだったが、メイリンはセイリンを呼ぶと、こう声をかけた。

「セイリン。今までたくさんの星を取ってくれてありがとう。わたしは、セイリンが取ってくれたお星様になって、空からみんなを見てるからね。だから、泣かないで…。プレアデスはわたしを仲間にしてくれるはずだから。」とにっこりと笑って言った。

セイリンは、いつの間にか押さえていた涙が溢れていた。メイリンは、そっとセイリンの涙をぬぐうと、たくさんの星が輝きだす頃、家族に見送られてそっと息を引き取った。


それから10年後のある日の夜。
セイリンは、夜道を歩きながら、プレアデスの中にひときわ輝く星を見つけると、にっこり笑って語りかけた。
「…メイリン、やっと会えたね。…やっと…仲間に入れてもらえたんだね。」
長い間足を止めていた。今までにないその輝きを見つめていると、自然と涙が溢れだしていた。

「おかえり…メイリン。」


                    ☆fin☆

〜あとがき〜
何百年もした今でも、プレアデス(昴)は冬の星座として輝いている。その中でも、ひときわ輝いて見える星を、Mel.22といいます。セイリンがこの事を知ったら「やっぱりね。メイリンの星だ。」と言うのでしょうね。

*注意
 Melは、実際何と読むのかも、正式名称も、私にはわかりません。
 しかし、全てのキャラクターやストーリーが出来てから、星の事を調べ、運命のように感じたのです。
 
 読ん

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