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□君を貫く感情の矢印!
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※ヴェスペリアの始祖の隷長精霊化条件を無理矢理ラタトスクに当て嵌めた痛いパロ

※アステル→エクスフィア化→エクスフィアからアステルを転生させようとするリヒター→ラタトスク誕生の怒涛のカオス展開

※ぶっちゃけキャラの口調が曖昧(致命的)

※蛇足だらけ














アステル。




彼は、リヒターにとっての人間の定義を大きく狂わせた男だ。

ハーフエルフの彼に共感し、反感し、悲しみを分かち合い、怒りをぶつけ、それでも最後には隣で微笑み合っている。
人間、否。ハーフエルフの仲間でもこのように接してくれた者はいただろうか。



その友は今、リヒターの手の中に収まっている。
きらきらと輝く宝石のような鉱石。エクスフィア。
ソレが今のアステルだった。





リヒターが最後に見たアステルは教皇の命で教会に呼び出されて、とても不思議そうにしながらもいつものように穏健な笑みを浮かべていた。








マーテル教会とハーフエルフの集団が裏で繋がっている。

当時リヒターが知った事実はリヒターにとってそれほど衝撃的ではなかった。

ただその事実を同じハーフエルフの者がヘラヘラと語ったことに怒りを覚えた。
曰く、その集団はディザイアンというらしく、彼らの技術は


人間をの命を利用して、エクスフィアを目覚めさせることができるというのだ。






リヒターもエクスフィアという存在については以前から存知していた。
ヒトの能力を最大限に引き出す道具。



リヒターにその旨を伝えた彼もエクスフィアを装備していた。
そして装備していたエクスフィアとは違うソレを見せて言うのだ。


人間などに使役されていないでその知識を我らの役に立てろと、
人間などには及ばぬこのような技術のある我らの元に属せと、







気がつけば、リヒターの手にはキラキラとエクスフィアが輝き、



目の前には一人分の血だまりが出来ていた。








彼は、リヒターは二つのことが許せなかった。



ひとつは、彼と同じ人間がアステルを献上したこと。

ひとつは、リヒターと同じハーフエルフがアステルをエクスフィアの為に利用したこと。






彼は全てを鎖して研究施設から姿を消した。



アステルだけを信じ、取り戻す為に、







リヒターの中で為すべきこと、アステルを取り戻す為の理論は既に組みあがっていた。



一つのエクスフィアが目覚める為に奪われた彼の生命。その精神を、ソレから乖離させて精霊として具現させる。

疎ましいエクスフィアの増幅器としての力を利用するのだ。





彼の本来の研究とはかけ離れた試みだったが実現させることを戸惑う事などなかった。
頭を抱えても諦めもせず、代わりに彼を売った人間の手も彼を変えたハーフエルフの手も借りずに作業に没頭した。




元々根気も才能もあった。
まだまだ若いが頭は悪くない。


しかしハーフエルフとしてはまだまだ、余りに若かった。

兆しが見えた途端ピッチを上げて研究を進めてしまった。


リヒターにとってのアステルの存在の大きさが彼に焦りを植え付けていた。





しかし実際に、ほぼ飲まず喰わず寝る暇もなしの生活をそれ以上続けていたならば研究を実現させる前にリヒターの方が危なかったのだろう。



そして彼は、早い段階で遂行してしまったのだ。


エクスフィアから成る今までの、世界のマナから構成されていた精霊とはまた異なる存在の、新たな定義の精霊の生成を。






エクスフィアの、増幅器としての力をマナに近い状態に再構築していき、実際のマナである己の魔力を紡ぎエクスフィアに導いていく。
それぞれのマナはエクスフィアに宿った意思を具現化しエクスフィアの替わりに彼を再構成する。結果、精霊としての彼が誕生する。
エクスフィア覚醒の元となったアステルの生まれ変わりとも言える存在、以前の記憶も保持している。はずだ。







しかし実際に誕生した彼はリヒターの想像していたものとはかけ離れていた。








中途半端な長さで間抜けにぴょこんと癖毛が立つ金髪。
研究者ならではの一般人よりも色白な肌。
痩躯とまでは言い切れないがほっそりとした体つき。


ベースは確かにアステルそのものだ。だが。明らかに違う点もはっきりとある。




まるで獣のように生え揃った牙と爪。
エルフと違い、尖っていない人間の耳は無く。内側に少し丸まった小さな耳がちょこんと頭部に鎮座する。
腰の辺りからは異様にふさふさとした尾が生えて、ゆらゆらと揺れている。


服装も生前とはまるで異なり、蒼を基調とする、ゆったりとしたローブのような布が左腕を除いて彼の身体の殆どを包み込む。そのかわりに完全に剥き出しになっている左腕は獣そのもので、体毛に覆われて、しなやかに伸びたソレは人間ではない彼の存在を主張した。




そこまではまだ良かった。どんな姿になろうともアステルならば許容しよう。本人が嫌がるならばなんとか改善する策を練ろうとリヒターは考えていた。だが、






温和な性格のアステルとはまるで違った獰猛な紅い瞳。


不適に弧をつくる口元。



極め付けに第一声。









『おい、なんだてめえは』










リヒターの中の何かがプツリと切れた。





(…――それは、こちらの台詞だ…ッ!!)





『ああ、いや、わかってはいる…リヒター、リヒター・アーベントだな。』



まるで過去の記憶を思い出すかのようにソレは自らのこめかみをトントンと叩き言葉を吐き出す。その立ち振る舞いにリヒターは苛立ちを禁じえなかった。



アステルの記憶を勝手に引き出して、
まるで他者がアステルのものを許可無く使用しているようで腹が立つ。

睨むように見詰めてみても全く動じない目の前の精霊は淡々と言葉を紡ぐ、





『わかっているとは思うが俺はアステルだ。』



馬鹿な。



『だがアステルではない。』



どちらだ。



『だから俺を定義する名を寄越せ。』



無駄に偉そうだな。



『よろしく頼むぞ、リヒター・アーベント。』









こ と わ る。
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