蝶の宮殿

□大切な…
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スピードが出てなかったのと、運転していた人が気がついたのが早かったのと。
急ブレーキで、すんでのところで車は止まった。

音に驚いて家からばらばらといっぱい人が出てくる。

「何事だ」

「あっ、嬢ちゃんっ、怪我は?
大丈夫かっ」

「てめぇ、
危ないだろうが!
前見て運転してたのか!」

組の人達の声で、先程の恐怖から解放され、火がついたように泣き出した。

「ぅわぁーーーん」

泣き出した私の傍に、いちばんに走って来たのは…
兄。

大人達の手から私を引っ張ると、
「こわかったか。
おにいちゃん、よんだから……ごめんな。

だいじょうぶだよ、
だいじょうぶ、あおい。
いたくなーい、
もうこわくないから。
おにいちゃん、あおいのこと、ずーっとまもってあげるから。
これからもずーっと。
こわいこと、もうないからな。
だからなかないで」

そういって頭を撫でてくれた。

その時どれくらいの決心をして、兄が私にそう言ったのか…
全く知る由もない。
小さい妹から目を離して、怖い思いさせた事。
悔いていたのかな…
兄なりに。

そんなことがあったその日そんな兄からも離され、篁の娘になった…


“家族”でなくなって
離れて暮らすようになっても、大人になった今でも、あれ以来ずっと私を心配して、辛い事から庇い続けようとする。
多分あの時私に言った事…
そんなにも強い決心だったんだ…
だから今でも
私も兄には甘えてしまうのかな、最終的には。

いつも、ありがとう
お兄ちゃんは
やっぱりいつまでも蒼衣の味方…だよね?


‐fin‐
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