短編
□雨
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「私、雨が一番嫌いなのよね」
ザーと降る雫を恨めしそうに見つめる。
「馬鹿よね、あんた。ホント、馬鹿」
足元に転がる骸に視線を落とし声をかけても返事はない。
それでも私はあんたに話かけた。
「何も悪いことはしてないのにね。あんたは里から邪魔者扱いされ弟に憎まれ、果たしてあんたは本当に幸せだったのかしら」
しゃがみこみ、そっと頬を撫でてみた。
雨は私の体温も奪って、あんたの体温も奪っていく。
私もあんたも冷たい。けど、唯一違うのは生きてる体温の低さともう上がることのない体温の低さだった。