短編

□これからは私を置いてなんかいかないでね
1ページ/1ページ


『聞いて!私も暗部になれたんだよ!』

『名無しさんが、か?スゴいな』

『これからは一緒になれるかもね!』

『そうだな。俺も気がぬけないな』








「……」

昔の夢を見た。ずっと昔の、そう、彼がまだ里の者でまだ幼いながらも精一杯頑張って暗部になった日の事。


ねぇ、イタチ
何で私を置いて勝手に行っちゃうの?
私、貴方に着いていきたくて必死に頑張った。
足手まといになりたくないから死に物狂いで頑張ったんだよ。
イタチのためなら何でもできると
なのに何で?
私を連れていってくれなかったの?
などと自問しても彼がいる訳ではないから答えは返ってこない。






「……久しぶりだな、名無しさん」

「イ……タチ」

夕べ見た夢とは違い久々に会った彼は、とても美しく誰だか最初は分からなかった。
まさか、夢じゃなく現実で会えるとはね。


「何、しにきたの?」

震える声を無理やり繋ぎ言葉を発する。

「九尾を探しにな。あと……」

深紅の瞳から暗黒の瞳に変わる。

「お前を迎えに来た」

「嫌って言ったら……?」

「無理やりでも連れていく」

イタチの手が私の頬を撫でる。それが擽ったくて瞼を細めた。

「嫌なわけないじゃない。イタチの役に立ちたい」

「後悔、しないか?」

イタチは私を見つめ確認する。さっき無理やりでも連れていくって言ったくせに。

「むしろ、貴方に着いていかなかったら私ずっと後悔する。きっと」

「……そうか。すまない」

「謝らないで。また一緒になれるんだから、ね?」

「あぁ……じゃぁ、額当てを貸してくれ」

「うん」

額にあてていた額当てを外しイタチに渡す。
ギギギッと鈍い音を立てクナイで木の葉のマークに一の字の傷をつけた。


「これで晴れて私は裏切り者ね。私、イタチと一緒なら地獄に堕ちたっていいわ。イタチを悪者扱いした木の葉なんてくそ食らえだわ」


「!!……知ってたのか」

「暗部部隊長を嘗めないでちょうだい。これからは貴方の罪も私、背負うわ」

私はクスリと笑った。
彼も本当にすまないと苦笑いをし傷のついた額当てをつけてくれた。







これからは私を置いてなんかいかないでね。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ