短編
□日和様からカカシ夢
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「何してるの?」
そう問えば、ヤツは「なーんでもないよ」と空気を歪めた。
背中が小さい。
いらいらとむかむかで喉がいがつく。鬱陶しい。
風が脅かす木々のざわつきが私の身体を包み込んで揺らしては撫でた。
唇の震えが振動をまとう。
ヤツの背中はひどく笑えた。
「今回の忍務失敗はあんたのせいなんかじゃないのよ」
「……よく言うよ。お前が俺を一番責めているくせに」
「反論しないわ」
「しないのかよ」
「事実だもの」
「……あ、っそ」
背後から突き刺している私の殺気なんて蚊に刺されるよりも軽いとでも言いたいのか、ヤツは微動だにしない。
こちらを振り返る仕草一つ見せずに、慰霊碑がヤツの視界を支配していた。
むかつく。
過去に囚われて止まないヤツことはたけカカシも。
ヤツの親友でありながら部外者という立ち位置以上を許されない私自身も。
過去は変わらないのよ。
あんたの目をもってしても。
私の力をもってしても。
過去だけは不変。
いつまでそうしているつもりなの。
いつまでそうして立ち止まったままでいるつもりなの。
「……カカシ」
今までかけらも反応を表に出さなかった親友の耳が器用にぴくりと動いたのは、この空気に耐えられなくなったからなのか、慰霊碑を眺めるのに飽きたがらなのか満足したのか、それとも、通常より幾分頼りない私の声色のせいなのか。
「私、役立たずよ。非力で無力でなんの力にもなってあげれない。カカシが辛いとき悲しいときに、私は背中をさすることもできないわ」
「お前の場合、できたとしてもやらないだろ」
「やらないよ」
当たり前のように即答すれば、帰ってくるものはなにもなくて、代わりに溜め息が空気を染めた。
「私は何もしないよ」