君と僕らのSchool Life

□心の天気-雨のち晴れ-
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『本日は雲一つない快晴に――』


ふと、一将の脳裏に今朝見た天気予報が浮かんだ。




――…雲一つない快晴?どこが。




誰もいないバス停のベンチに腰かける一将は、ザアザアと大粒の涙を溢す空を睨み付けた。



「…あの天気予報は絶対に信用するもんか」


ずぶ濡れになったシャツを絞りながら一将は愚痴る。


一将が何故こんな所にいるのかというと、それは遡ること一時間前――




「もういい。出てく」




きっかけは、花代との言い合いからだ。何を理由に言い争っていたのかは思い出せないが、それくらい些細な事だ。

「出て行く」と言った瞬間、花代は驚いたように目を丸くした。正直言えば、自分でも驚いている。
しかし、一度言ってしまった以上後には退けない。睨み付けるように花代の方を見ると、その表情は険しかった。




「あー、そうですか!ならさっさと好きな所に行けば?」

「……言われなくても行きますよ!」



ばたんっと乱暴に玄関の扉を閉めて、今にも降りだしそうな鉛色の空の下を歩きだし、――今に至る。






「………」


一将は小さく溜め息をこぼしながらベンチの背もたれに身を任した。
濡れた髪から雨水が数滴、頬を伝った。




――…俺が悪かった…のかなぁ…?



喧嘩の理由は思い出せないが一将の心の中で罪悪感に似た感情がぐるぐると渦巻く。それはまるで今の天気のように。




――…やっぱ、帰ろうか。



少しだけ弱まった雨足に一将はそう思ったが、すぐに顔をしかめた。



…帰りにくい…。



もし家に帰ったら、あの姉は自分に何て言うだろうか?嫌味だろうか、それとも優しい言葉だろうか。…いや、それはないか。


自嘲しながら一将は自分が歩いてきた道の方を見ると傘を指した人影が歩いてきているのが見えた。





その人影は一将のいるバス停の前で歩みを止めた。



「………あ」



思わず変な声が出た。


「…か、よ…?」

「……何よ」


ぶっきらぼうに答える花代に一将は気まずそうに目を伏せた。
すると、突然頭に何か白い物を被せられた。



「…タオル?」


ふと、嗅ぎなれた洗剤の匂いに一将は頭を上げようとしたが、それは花代の手によって阻止された。



「本当、このバカ猫は…。雨が降ってるのに帰ってきやしないんだから…」



ごしごしと少し強めに一将の頭をタオルで拭きながら花代は呆れたように呟く。



「…お姉ちゃん、心配するでしょーが」





「…………ごめん…なさい」


俯いたまま、蚊の鳴くような声で一将が言うと、花代の手がポンポンと優しく頭を叩いた。

頭を上げると、そこにはいつもの笑みを浮かべる花代がいた。


「…ほら、買い物行くよ。今日は卵と醤油買うからアンタ荷物係ね」

「ん」



ベンチから立ち上がり、空を見上げると、いつの間にか雨は止み、雲の隙間からは光が射し込んでいた。






心の天気-雨のち晴れ-
雲一つない快晴です。




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