君と僕らのSchool Life

□願わくは
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今日は珍しく早く教室を出て武道場に行ってみた。
ほら、たまには主将らしくしねぇと後輩にバカにされちまうからな。


「お、まさかの一番乗り?」


武道場に着くと、まだ誰も来ていない。
――あぁ、なんか優越感。
中に入ろうと思ったけど、道場の鍵は一将が持ってるんだっけ。どうしよう。外で待つか?
……いや、せっかくの一番乗りだ。どうせなら皆を驚かそうじゃないか。


俺はブレザーのポケットから少し古びた鍵を取り出す。もちろん効果音とお決まりのセリフも忘れない。


「じゃ〜ん!“裏鍵”!!」


裏鍵とは、『道場の裏口の鍵』の略称だ。代々剣道部の主将に伝わるものらしく俺も前の主将から貰った。


俺はいそいそと裏口から中に入り、扉の前で仁王立ちしてみた。
きっと次にここに来るのは鍵係の一将だ。扉を開けた瞬間、アイツは一体どんな顔をするんだろう。想像するだけで笑ってしまう。



* * * *



――だが、10分待っても20分待っても誰一人として来やしない。
なんだコレ。むちゃくちゃ寂しいじゃないか!!


「…ふ、ふん!これだからヤル気のない奴は嫌いなんだよ!!良いもんね!セーギさん、一人でも平気だもん!!」



バカみたいな俺の声が虚しく道場内に響いた。

…ま…負けるもんか。
――そうだ!黒板に落書きしよう。何を描こうか?
皆の似顔絵でも描こう。

そんな事を考えながら手にしたチョークを黒板に走らせようとしたが……


キィィィィィッ!!



誤って爪で黒板を引っ掻いてしまった。
殺人的な不快音が俺の耳を襲う。
…落書きはやめよう。危険すぎる!!



「…そーいや、この前バレー部から盗んだボールがあったような…」


どこだっけ?
ロッカーを探ると奥の方からまだ新品のバレーボールが出てきた。
ボールには『蒼天高校 バレー部』とあるが、喜べ。今日からお前は我が剣道部の備品だ。
俺は筆箱からマジックを取りだして、『バレー部』を『剣道部』に書き直した。よし、完ぺき。
これで少しは暇潰しができるかな。



* * * *


それから20分くらいは一人で遊べた。連続で何回トスできるかとか、一人三役で試合の一場面を演じてみたり…。
まぁ、楽しいっちゃ楽しいけど、それ以上に



虚しい……。



「チクショーッ!!何で誰も来ないんだよーッ!?」



バンッと壁にぶつけたボールが静かに転がっていく。


…ヤバい。そろそろマジで泣きそうだ。


その時、武道の扉の鍵が開く音がした。


「!!」


振り返ると、そこにはキョトンと呆けた一将の姿があった。



「…あれ?セーギ先輩?……って、何で涙目―――」

「がずまざぁーーーーッ!!」

「ぎゃあああああ!!?」




俺が涙を流しながら一将に抱きつくと、一将は猫みたいに飛び上がった。なかなか酷いぞ、お前。


「ちょっ…離れて先輩!気色悪い!!」

「来るのが遅いんだよバカーッ!!どんだけ俺は一人で待ったと思ってんだ!」

「どんだけって…まだ、7時間目終わって5分くらいしか経ってないでしょ?」



……7時間目?


刹那、頭の奥でサァーっと血の気が引く音が聞こえた気がした。





願わくは
それは嘘だと言ってくれ!!



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