君と僕らのSchool Life

□オーディンの苦悩
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「……で、この公式を使えば答えが出てくるの。……これでわかった?」

「んー、わかんない!」



拓哉の清々しいぐらいキッパリとした返事に裕馬は深い溜め息をついた。


今日の部活はテスト前という事でみんなで仲良く武道場で勉強会。裕馬は拓哉の頼みで数学の勉強に付き合っているのだが……



「ねぇ、拓哉。俺この説明十回はした気がするんだけど……」

「……なんか、いろいろとスイマセン……」

「……あー。まぁ、気にしないで。誰にだってわからない事ぐらいあるって」



とりあえず慰めてみたが、あまり良い効果は見られず拓哉はそのまま机に突っ伏してしまった。



「あ〜あ、俺もゆまっちみたいに頭良かったらなぁ」

「え?何で?」

「だって、頭良かったらこんな問題だってスラスラ〜って解けるし、みんなからもキャーキャー持て囃されるんじゃないの?」



その言葉に裕馬が微妙な表情をすれば、拓哉は「違うの?」と小首を傾げた。



違うって訊かれてもねぇ………。



* * * *




今日の図工の時間はお絵描きだった。各自、自分の好きなものを描いて言い。そう先生が言っていたけど………小2にもなってお絵描きってのもなぁ……。




「――裕馬くん、裕馬くん」



不意に隣の席の女の子がニコニコと笑みを浮かべて俺に話しかけてきた。



「……なに?」

「へへ、見て!あたしの絵!上手でしょ?」



そう言って目の前に広げられた紙に描かれていたのはニコニコと笑う女の子と、同じくニコニコと笑う動物たち。それと……―――



「ねぇ、この周りのは?」

「これ?これはねー、シャボン玉!」

「シャボン玉?」

「うん。星形とかハート形で可愛いでしょ?」



そう言って彼女は絵の女の子みたいニコニコと笑う。うん、まぁ可愛いけど、それよりも………



「シャボン玉は星形にもハート形にもなれないんだよ?」



俺の言葉に女の子は一瞬、わけがわからなかったのか表情をキョトンとさせて、すぐにムッとした顔をした。



「嘘。星形のシャボン玉、あるもん!」

「シャボン玉は丸だけだよ」



止めておけばいいのに。

面倒な事になるってことぐらいわかってるのに、つい口を出してしまう。



「なるもん!ちゃんと星形のやつでシャボン玉を作ればなるもん!」

「ならないよ。なってもほんの一瞬だけだよ」

「裕馬くんの嘘つき!!」



“ウソツキ”


事実を述べて、なんで俺は“嘘つき”呼ばわりされるんだ。わけがわからない。



「嘘じゃないよ」

「先生、裕馬くんが嘘つくの!!」



その女の子が泣きながら先生にそう言うけど、嘘をついているのはそっちじゃないか。嘘つきでない人間をコイツは嘘つきですって嘘を今、先生についたじゃないか。

……だけど、そんな事言ってもどうせ屁理屈だと言われるだけだから、もう口を閉ざす事にした。
それが、問題解決の秘策だから。




オーディンの苦悩






「―――…俺は、」

「ん?」

「……俺は拓哉みたいな人の方が羨ましいよ。いろいろ知りすぎると結構大変だからね」

「……あー、そうか。そうだよね。映画とかでも『お前は知りすぎた』とかって言われてマフィアに殺されるシーンがあるもんね。……ゆまっちも大変だね」

「………そう言う意味じゃないけどね」






……もしも、


もしも、この世に全知全能の神様がいたなら、彼も、俺みたいに“嘘つき”呼ばわりされて悩んだのだろうか。





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