RAIN OF BLOOD

□壱 In the school
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誰もいない物静かな校舎。

そこに、コツ…コツ…と静かに反響する一つの足音。窓から照らす月光が捉えたのは一つの影。その身に纏う制服からして、この学校の生徒のモノだろう。
影はゆっくりと廊下を突き進み、屋上へと続く階段を上って行く。途中、何かコツンと乾いた音がしたかと思えば、影が昇って行く階段から何かが転がり落ちてきた。淡い光に映し出されたそれは一足のエナメル靴。それに少し遅れて、もう片方の靴も上から転がり落ちてきた。
それでも足音は止まる事はなく、ヒタリ…ヒタリとゆっくり階段を上がる。そして、制服の上着、ネクタイ、シャツ、とまるでストリップのように一枚一枚着ている制服を脱ぎ捨てていく。

そして、ようやく屋上に続く扉の前で影は歩みを一度止め、少し錆びついたドアノブに手を伸ばして、重たい扉を開けた。
雲ひとつない夜空の中に煌々と輝く満月。その光に照らし出されたのは人の姿ではなかった。月光に照るのは人の肌ではなく鈍い銀色に輝く長い剛毛と剛腕。長く尖った口には肉食獣のような鋭い牙がずらりと並んでおり、闇を睨む瞳は金色に光っていた。
獣のような姿をしたソレは夜空に輝く満月を見上げると、鋭い牙の並ぶ口をばっくりと開けて大きく息を吸い込み、轟音にも似た声を上げて吼えた。






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