RAIN OF BLOOD

□弐 狂い喜び
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「…ここか」

「廃病院なだけあって、薄気味悪いですね」


薄暗い山奥に佇む廃病院からは異様な雰囲気を出している。どこからか聞こえてくる鳥の鳴き声がさらに不気味さを生み出す。


「確か、僕らの班は20分後にこの正面玄関から侵入ですよね?」

「あぁ。…今ごろは二つ目の班が侵入してるころだろうな」


この廃病院に到着してから彼らは簡単な作戦を立てた。それは、全滅を回避するために全員が一斉に突入するのではなく、数分おきに四ヵ所ある入り口から一班ずつ侵入する事。侵入する順番は、青龍・朱雀・玄武・白虎の順だ。



「…ねぇ、何で妖刀はこんな所に逃げ込んだの?」


不意に晄が不思議そうに泰人に尋ねた。その問いに彼は呆れたような表情を浮かべた。


「…何でってお前…。自分の力を高めるために血を求めているからだろう」

「でも、ここには人間はいないよ?」

「…人は、な。だが、人に近い存在はいる…」


泰人がそこまで言うと、何か気付いたのか晄は「あ、」と小さく声を出した。


「…人の、魂…」

「正解。人間から血を吸っても得られる力は僅かだが霊力の塊である魂からはそれなりに力を得られる。……ここらに充満している血の匂いはその魂のモノだろうな。…血生臭い…」


辺りに充満する血のような匂いに泰人は顔をしかめる。玖旺もよく効く鼻を抑えながら辛そうに頷いた。


予定の時間までの間をぼんやり過ごしていると、無線機のイヤホンから小さな雑音聞こえた。

「…おい、今何か音しなかったか?」

「え…?音、ですか?」

泰人の言葉に玖旺と晄が首を傾げる。


「気のせいじゃないですか」

「……かもな」


―…久しぶりの高難度な任務に緊張でもしているのだろうか、俺は…。


そう思いながら泰人が煙草を取り出した、その時。廃病院の奥から凄まじい叫び声が響いてきた。


『!!?』


ひとつ、ふたつと響く叫び声。それらは恐らく妖刀のものではなく他の隊のものだろう。


「おい!!どうしたんだ!」


慌てて泰人が無線機に向かって怒鳴ったが返事は聞こえてくる事はなく、ただ雑音だけが聞こえるだけだった。
返事のない無線機に泰人は舌打ちすると、病院内を確認しようと千里眼を発動させる。


「…?!」

「どうしたんですか?」


驚いた様子の泰人に玖旺が声をかけた。


「……何も、見えない…」


そう答える泰人に晄が何で?と尋ねる。


「…たぶん、何かの術だろうな。俺らも行くぞ。まだ生存者が居る可能性があるからな」

「急ぎましょう!」




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