RAIN OF BLOOD
□参 鳴り止まない狂気
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「二匹目………」
「晄、離れろッ!!」
不意に聞こえた少年のような声に泰人が鋭く声を張り上げた。
「…ッ!?」
泰人の声に晄は大きく後ろに飛び退く。それと同時に何かが空を切る音がした。
「そこかっ!」
泰人が薄暗い通路に向けて札を二枚勢いよく投げつける。
すると、通路から「ぎゃっ!」という小さな悲鳴が上がったかと思うと、パタパタッと何かが走る音が響いた。
「逃がすか!」
「待って、泰人!!」
何かを追いかけようとする泰人を晄が引き止める。
「…玖旺の傷が…」
「かなり深いのか?」
泰人が尋ねると、晄が泣きそうな顔で頷いた。その表情に彼は困ったように溜め息をこぼした。
* * * *
玖旺の止血をするために、二人は一度、一階の診察室に降りてきた。
「…とりあえず、これ巻いとけ。衛生面ではちょいとアレだが、ないよりかはマシだろう」
そう言って泰人は晄に包帯を一つ投げ渡した。もうかなりの年月が経過しすぎてなのか包帯は少し汚れていた。
「…うん」
いまだに泣きそうな顔で晄は頷き、玖旺の腹に器用に包帯を巻いていく。
それを横目で見ながら泰人は溜め息を煙草の煙と一緒に吐き出した。
「…その傷程度なら死なねぇから。安心しろ」
「…分かってる、けど…」
玖旺の血のせいで赤く染まった着物の裾を握りしめながら晄はうつ向く。
終いにはぐずつき始めた晄に、泰人は再び困ったように首の後ろを掻きながら溜め息を一つ。
「…とにかく。泣いてるヒマがあるなら、さっさとここから出て本部に帰るぞ」
――玖旺をいつまでも放っておくわけにもいかんだろう?
「…うん」
泰人の言葉に晄は視界を歪ませていた涙を拭き大きく頷いた。それを見て泰人が小さく笑った。
――…刹那、
「…見ィーつけた…」
泰人の背後から少年の声がしたかと思うと突然、彼の右肩から鮮血が吹き出る。
「な…っ!?」
鮮血が溢れる肩を抑えながら泰人が飛び退き、自分の背後を見た。
そこに居たのは中学生ぐらいの少年だった。その手には先程泰人を切りつけた日本刀が握られている。
少年は驚いた顔をしている泰人を見てニヤリと笑った。
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