RAIN OF BLOOD

□肆 狂気のち静寂
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「………化け物、かな…」


血のような赤い両目の泰人がニィと不敵に笑って……


――――…目が覚めた。


「…あー……いけない…寝てた…」


山積みの書類が乗った机に突っ伏して寝ていた杏奈はのそのそと体を起こし、ゆっくり伸びをして、ちょっぴり跳ねた前髪を直しながら、一度中断していた書類整理に再び取りかかった。


「………」


しかし、一分も持たないうちに杏奈の手は止まり、先ほど夢で見た両目の赤い泰人の姿を思い出す。


「……泰人さんたちは大丈夫…あの人たちが怪我なんかするわけない…。皆、無事に帰ってくるんだから」


一言、一言、自分に言い聞かせるように杏奈は呟き、また作業に戻った。



* * * *



「――――月読様ッ!!」


肩で大きく息をしながら壬風が月読の部屋の扉を勢いよく開けた拍子に、机の上に積まれていたトランプのピラミッド(もうすぐ完成)が無惨に崩れ落ちた。
脚立の上に上がっていた月読が「ありゃ〜…」と情けない声をあげる。


「月読様!遊んでる場合ではありません!!緊急事態ですよ!」

「あ゛ー…緊急事態?何やねん」


ピラミッド崩壊に機嫌が悪いのか、不機嫌そうに月読が尋ねた。


「先ほど、妖刀回収班が帰還してきまして…」

「お、アイツら帰って来たんか。…で、何班帰って来た?」

「白虎隊第二班の――」

「あぁー。やっぱ二班か。ま、確かに他の連中じゃ妖刀には歯が――」

「話しを最後まで聞いてくださいっ!!」


本当に焦っているのか、珍しく大声を張り上げる壬風に月読は目を丸くした。


「……帰還したのは、白虎隊第二班の玖旺、晄の二名で二班の班長である折原泰人は依然、妖刀と対峙しているそうです」


早口で壬風が報告書を読み上げ顔を上げると、そこには先ほどまで遊んでいたとは思えないぐらい険しい表情をした月読があった。


「……ちょっと待て。今の報告からすると、泰人は一人で戦っているって事か?」

「……そういう事になります。いかがなさいますか、月読様」


月読は「だぁーッ!!」と奇声を発しながら、バンッと机を一度叩いた。


「いかがもクソもあるか!至急、白亜をその病院に向かわせろ。念のため帷と唯南も一緒にな」

「すぐに手配します」


一礼して部屋を出ようとした壬風に月読が待ったをかける。


「あと、集めれるだけ術師を集めろ!」

「妖刀を破壊せず、封印するのですか?」

「アホかっ!そっちやないわい!妖刀なんぞ、もう破壊されとる」


――――術師は、最悪の事態に対してや…。


絞り出すような月読の苦々しい言葉に壬風は目を見開き、抱えていた書類を握り締めた。




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