RAIN OF BLOOD
□壱 泰人の正体
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「えぇっ!?みんなが入院!?」
夕方頃、山積みだった書類整理を漸く終えた私は、突然の連絡に驚いて危うく書類の山を崩しそうになった。
「あら、知らなかった?自分の班でしょ?」
そう言ったのは、一緒に書類整理をしていた同じ隊の女性。その人(正確には妖怪)は平然としたような顔で私を見た。
「ぜ、全然知らなかったです……。でも、一体何で?」
「さぁ?私も他の班の事だからよく知らないけど、何でも今回の任務でやられたみたいよ。しかも、珍しい事に死人も出たらしいし」
「…しっ…死人!!?」
「ま、他の隊の奴らだけどねー」と、その人はケラケラ笑う。
よく笑えるなぁ…。
「でも、任務のせいで死んじゃうって可哀想じゃないですか…?」
私がそう言うと、その人は少しだけ複雑そうな顔をした。
「うーん……。周りの奴らはそう思っているかもしれないけど、死んだ本人達からしたら“殉職”ってのは本望じゃないかしら?」
「…本望…?」
おうむ返しに私が呟くとその人は静かに頷いて笑ったが、それ以上何も言おうとはしなかった。私も、それ以上何も聞けなくなった。
なんだか少し気まずくなってしまい、私はわざとらしく話題を変えた。
「そ…そう言えば、さっき班長たちが入院したって言ってましたけど、お見舞いって出来ると思います?」
「お見舞い?……確か、玖旺君の方は面会は大丈夫だったと思うけど、班長はどうだったかしら?」
今から行くの?と聞かれ、私は頷く。
「あ、でも先に書類提出しなきゃ…」
「それなら、あたしが出しといてあげるから。アンタはお見舞いに行っといで」
「え…いや、でも」
「いーから、いーから。ここは先輩に任せなさい!」
そう言って、彼女は出入口の扉目指して私の背中を押す。
「すいません。ありがとうございます」
「また、一緒に仕事しながら人世の話、聞かせてね」
手を振りながら、見送ってくれた先輩に私は「はい!」と答えた。
隊が同じでも班が違うからまた一緒に仕事が出来るかわからないけど、今度、もし会う機会があったら良いな。
その時は名前もちゃんと聞いておこう。
そんな事を考えながら、歩いていたけど、私はすぐに肝心な事に気付いた。
「……どこに行けばみんなに会えるんだろう…」
――――数分後、彼女が再びあの先輩にお世話になったのは言うまでもない。
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