コードギアス:短編
□目を逸らさずに
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「うぇっ……ごほっ、ごほっ」
かすれた咳《せき》が誰もいない部屋に響く。喉が水を欲しているのは自覚しているのだが、今は体のだるさが先行していて暫《しばら》くは動けそうにない。ルルーシュは溜め息をつくしかなかった。
風邪を引いた。それに気が付いたのは、今朝の事。
恐らく原因は、昨日の賭けチェス。完膚なきまでに負かしてやった貴族気取りの金持ち男が逆上して、グラスに入った水を彼に引っかけたのだ。何でもない事だと思い、自然乾燥に任せてしまったのがいけなかったらしい。
(回ってる……)
ぼうっとした思考で天井に手を伸ばせば、世界が回っているような感覚に襲われる。勿論それはルルーシュの錯覚なのだが、彼はそうとしか思えなかった。つまり、それ程までに彼の思考能力は低下しているという訳なのだが。