コードギアス:短編
□明日の、その先
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ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。それは悪逆皇帝の名。
ルルーシュ・ランペルージ。それは極普通の、学生の名。
「――ルルーシュ」
どこか温かみを帯びた魔女の声で紡がれたものは、荷馬車を引く男の名。
「何だ、C.C.」
それを当然の如く受け入れ、優しい音色で魔女の名を響かせる。顔を見合わせようともしない二人の間には、不思議な雰囲気があった。
「生きると言う事は、楽しいだろう?」
「……」
「どうした?」
「いや……まさかお前から生の楽しさを諭されるとは予想外でな」
「それは私に失礼だぞ」
不快そうにぼやくC.C.にルルーシュは苦笑を浮かべながら、虚空を見上げる。
そこに思い浮かべるのは、己の父の姿である。
「今となっては感謝しているが……あの男は、本当に余計な事をしてくれたな」
「全くだ。あいつのおかげで、私の流した涙が無駄になった」
スザクに(今となってはゼロと呼ぶべきだが)討たれたルルーシュは、一度死んだ。皮肉にも、世界はソレによって良い方向へ動き出したと言えよう。
それこそが彼の意志であり、世界に唯一残したもの。
妹が望んだ『優しい世界』に一歩でも近付く為。自分が望んだ『明日』を手に入れる為。
――本来なら、魔王ルルーシュの物語はそこで終わるはずだった。
だが、物語はまだ続いていたのだ。