コードギアス:短編
□無償の愛
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――俺はあいつに、本当の愛とやらを注ぐ事が出来るのだろうか。
「C.C.……」
口にすれば、甘く、ほろ苦い感情が胸一杯に広がる。
これでは、まるで恋する乙女のようだ。――いや。
実際、恋してるのだろう。否《いな》、愛していると思う。
愛していると確信出来ないのは、自信がないからだ。無償の愛だと言いつつも、心のどこかで見返りを求めているのではないかと不安になる。
無償の愛とは、一体何なのだろう。
「くそ……」
晴れない気持ちに嫌気が差した。はっきりしない自分に、それでも愛する事を止められない自分に。
「ルルーシュ」
後ろから、声がした。それは聞き覚えのある、心地よいものだ。
「――C.C.」
愛らしい唇が、声が、自分の名を紡ぐだけで、全身が甘い痺れと共に支配されて行く。そして彼女の名を口にしてみれば、まるで落雷に遭ったような衝撃が体中に走った。
「ただいま」
薄桃色の唇から吐き出される言葉を理解するのには、甘さに支配された俺でもそう時間は掛からない。
何て事はない、初歩的な挨拶だ。すなわち、返すべき言葉も簡単で済む。
「――おかえり、C.C.」
――愛してるのひとつも言えない自分に、また嫌気が差した。