春の巻
□八章 平塚 縄手道
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彼女はその場に立って、黙って事の成り行きを見ていた。
片方に加勢しても意味は無い。
きっと負ける。
もう片方にも意味は無い。
どうせ勝つ。
仕方が無いので空を見ていた。
ぼーっとしていた師匠は、視界の隅に動くものをとらえた。
「彼岸?」
見ると、彼岸が起き上がっていた。
「意識が戻ったのか?大丈……」
師匠の顔が、一瞬で真っ青になった。
目の前にいるのは彼岸だ。
・・・・・・
でも、彼岸じゃない。
これは誰だ!?
彼岸は置いてあった双剣を手に取ると、浴衣のまま宿を飛び出して行った。
水晶の中に世界が映っている。
そこに映る人は、肉体は薄紅だが、中身は白。
それを見ながら、水晶を見ていた者は笑った。
しぶといな、と。
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