春の巻

□序章
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桜が、満開だった。










赤く。海のように。

右手に持つ鎌は濡れていた。
両親は目の前で倒れていた。
血だらけでピクリとも動かず。

十歳の夏だった。





赤く。夢のように。

引きずり出された臓器。
剥がされた爪。
転がる目玉。
撒き散らかされた肉片。

八歳の春だった。





赤く、赤く、赤く、赤く、ただ赤のみ。




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