春の巻

□三章 川崎 六郷渡舟
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その日も胡蝶達4人は、次の宿場を目指して東海道を歩いていた。

空を、鳥が飛んでいる。


「おいしそう……」


彼岸がそれを見て言った。


「おい、ちょっと待て。変だろそれ!」


胡蝶がツッコミを入れた。


「え〜、だって鳥だよ?鳥肉だよ〜?」

「何でもかんでも食べることに結び付けるな!馬なら?」

「馬刺し」

「蜂なら?」

「蜂の子」

「鯨は?」

「竜田揚げ〜!!」


この時代に、そういう食文化ってあったかしら……。


「ったく、急いでんだから油売ってんなよ……」


慶徳が言った。


「やっべ、腹減ってきた。食べ物の名前言い過ぎた」

「俺は胸焼けがしてきたよ」

「うん。胡蝶も彼岸も、俺の言うこと聞いてね〜な。どうでもいいから、さっさと行くぞ」


慶徳はもう、慣れっこらしい。


「もー我慢できん。貴徳〜、あの鳥手裏剣で打ち落として」

「どれ〜?」

「あの大きいの」

「あれ食べれるの〜?」

「う〜ん……分かんない」

「はいはい、食べれない鳥。だから歩き出せよ」


そういう慶徳の表情は笑っている、一応。


「分かんないならやめよ〜。可哀相だよ」

「っつーか貴徳、あの高さで打ち落とせるんだ」


胡蝶が感心していった。


「余裕っすね」

「貴ーちゃん、すごいね〜」


彼岸が目をキラキラさせながら言った。

3人とも、もう完全に立ち止まっちゃってます。


「うわ〜、もう皆俺のこと完全無視?喧嘩売ってんの?買ってあげるよ〜」


慶徳がとうとう、薙刀に手を伸ばしながら言った。


「あ……ヤバッ」


真っ先に気付いたのは、貴徳だった。



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