春の巻

□五章 保土ヶ谷 新町橋
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その日も胡蝶達一行は、村時雨達を追う旅を続けていた。
が。


「っくしゅんっ!!」


胡蝶はくしゃみをして鼻をすすった。


「ヤッベー、マジで風邪ひいたかも」

「まったく、傘をとばされたりするから」

「だって……っくしゅんっ!!」


間髪入れずに、くしゃみは鼻を刺激した。
その様子を、彼岸がじ〜っと見ている。


「んだよ」

「いや、胡蝶でも風邪をひくんだーっと……」

「…………」


胡蝶の額に、青筋が走った。


「ほ〜……」


太刀が、チャッと音をたてた。
口は災いの元だ。


「テメェは風邪ひいたことがねーだろ、この馬ー―――鹿!!!!」

「キャアァァァ!!!!」

「あーぁ」


貴徳は止める気は無いらしく、2人を見ている。


「2人ともー、周りの迷惑にならないようにねー」


慶徳は、一応といった感じで言った。


「大丈夫ー」


胡蝶、それは太刀を振り回しながら言うセリフではない。

そのまま街中で喧嘩というより一方的な暴力が行われ、彼岸は気絶した。


「ふっ……見たか」


肩で息をしながら、胡蝶は太刀を片付けた。
その時だった。


「胡蝶!前!!」


貴徳が大声をあげ、前を見ると人がいた。


「!」


驚くのと同時に、抱き付かれた。
むしろ、抱きしめられた。


「こっちょ〜う」


現れた人は、胡蝶と同じくらいの背だ。
しかし、抱え込むようにしているため、上から声がした。


「しっ……師匠!!」


胡蝶は、その人物の呼び名を呼んだ。



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