春の巻
□十章 小田原 酒匂川
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傷だらけの人間がいると、当然旅もゆっくりになる。
前回は大磯という題名で、結局平塚にいた一行だが、ゆっくりとしかし確実に旅を続け、大磯の次の宿場である小田原に来ていた。
その小田原を少し離れたところ。
現在でさ湘南地方と呼ばれ暴走族とサーファーが多いそこに、小さな家があった。
「おーい」
師匠はそこに着くなり、扉を叩いた。
「誰ん家だろう?」
「さぁ?」
4人は何の説明もしてくれない師匠に、首を傾げた。
「おい!開けろ!萩信!!ゴルアァ!!!」
「師匠、戸が壊れる!!」
返事の無いことに腹を立てた師匠が戸を蹴り始め、慌てて慶徳が止めに入った。
「あーもー。はいはいはいはい」
流石に騒ぎに気付いたのか、中から声がした。
建て付けの悪い戸が開いて、中から出て来たのは茶髪の女性だった。
「あれ?何で海之助が?」
師匠は出て来た女性を見て、きょとんとした。
「ちょっと待て」
胡蝶がすかさずツッコミを入れた。
「海之助って、この人女の人だろ!!」
「えーっと」
海之助と呼ばれた女性は、少し戸惑っている。
「とりあえず、中で話しましょう」
女性に迎えられて、5人は家の中へと入った。
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