夏の巻

□十五章 袋井 出茶屋の図
1ページ/6ページ

腹が減ると腹痛にも似た痛みが走る。
空の胃が、締め付けられているように痛みだす。

そうするうちに痛みは麻痺して、養分が無いために全く動けなくなる。
考えることも嫌になり、半ば眠っているようになり。
「怖いもの」であった死が近付いて来ていることに気付いて、それでも驚くことすら無くなる。

そんな中だった。
あの人と会ったのは。





『童、生きたいか?』

『生きたいのなら職をやろう。金が稼げれば、食べる物も手に入る』

『どうだ?』



『その子を、助けたいのではないのか?』





ずっと決めていた。
こいつだけは、妹だけは、必ず死なせない、と。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ