夏の巻
□十五章 袋井 出茶屋の図
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腹が減ると腹痛にも似た痛みが走る。
空の胃が、締め付けられているように痛みだす。
そうするうちに痛みは麻痺して、養分が無いために全く動けなくなる。
考えることも嫌になり、半ば眠っているようになり。
「怖いもの」であった死が近付いて来ていることに気付いて、それでも驚くことすら無くなる。
そんな中だった。
あの人と会ったのは。
『童、生きたいか?』
『生きたいのなら職をやろう。金が稼げれば、食べる物も手に入る』
『どうだ?』
『その子を、助けたいのではないのか?』
ずっと決めていた。
こいつだけは、妹だけは、必ず死なせない、と。
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