春の巻

□四章 神奈川 臺の景
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宿の主人に傘を借りて、雨の中をあても無く歩いた。

なるべく人のいない方へ。

雨の中から視線を感じる。

稲荷の前まで来て、胡蝶は傘を閉じた。


「ここならだれもいねーなぁ?」


雨が方を濡らす。


「さっさと正体現せやぁ!!!!」


そう怒鳴った直後、背後に気配を感じた。


「!!」


振り向いてみると、そこにいたのはおかっぱ頭の童女だった。
白い着物が、雨に濡れることなく、童女をつつんでいる。
前髪の影で目は見えないが、口元はあきらかに笑っていた。



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