春の巻

□七章 藤沢 遊行時
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ふらふらと街を歩くことは、面倒なだけだ。
無駄な体力を使うだけ。
冷やかしに店先を覗いても、面白いものは見付からない。
見掛ける人は、皆つまらない凡人ばかり。

しかし目的があるというだけで、体力は無駄ではなくなる。
目的が楽しいものならば、その分面倒臭さは消える。

人とは不思議なものだと、村時雨は密かに笑った。















「あー……、大丈夫だろうか……」


部屋の窓から外を見ながら、慶徳はブツブツそんなことを言っていた。


「慶徳、落ち着け」


見かねた胡蝶が、一言言った。


「だって、彼岸を1人で出掛けさせたんだぞ?」


慶徳は胡蝶に詰め寄った。


「馬鹿で阿呆で間抜けでとろくて、その上餓鬼で世間知らずで危なっかしいイタイ子なんだぞ?」

「そこまで言うか」

「じゃあ、どっか否定できるか?」

「……無理です」


胡蝶は素直に負けを認めた。


「あー、平気だろうか」


慶徳は頭を抱えた。


「転んでないか?」

「そのレベルの心配かよ」

「分からないだろ?転んだところを誰かに踏まれて潰されるかも」

「あいつは虫か……?」


もしここに彼岸がいたら、失礼なと怒っていただろう。


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