連載

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昔、むかしのお噺です
誰も知らない、お伽噺

かつて、この国は小さな小さな国でした
その国には翡翠の瞳の王がいて、王は等しく国を治め、民を治めました
翡翠の王が治めた国は、豊かになり、民は笑い。繁栄し、今の国となったのです
そうして王は消えました
静かに静かに消えました




望むは何ぞ、





───名前、ロックオン・ストラトス。本名は不明。西のゲール皇国(10年前に滅亡)の出身と思われる緑の瞳を持つ。
罪状は殺人。本国南端のアーリヤにおいて、街の七割を殺戮した。その後も各地を転々としている。軍将校も既に数名殺されており、近年稀に見る重犯罪者である。────



弟───アレルヤから上がって来た報告に、ハレルヤは舌打ちした。
経歴が派手すぎる。今まで耳に入ってなかったことが不思議なくらいだ。
案の定、アレルヤは苦笑していた。

「本当、ハレルヤって他人に興味ないよね。“翡翠”───ロックオン・ストラトスといえば、有名なんてレベルじゃないのに」
「うるせぇ。つかあいつ、こんな大それたことやるような質か………?」

アレルヤの苦笑を睨みつつ、並べ立てられた数々の罪状に首をかしげた。
強かった。それは間違いない。けれど、こんなことをする男には見えなかったのだ。
ハレルヤの言葉に、アレルヤは少しだけ困った顔をした。

「ねぇ、ハレルヤ。ハレルヤが会った人がどんな人でも、“翡翠”は間違いなく僕達の追うべき犯罪者だよ。それは、わかってるよね?」
「………わぁってるよ」

苦々しく、頷く。
ハレルヤは軍人だ。国の命令は絶対で(ハレルヤや、意外だがアレルヤも度々命令違反しているが)、基本的に逆らえば即、死が待っている。
何より二人には軍人でいる必要があった。───病気の妹がいるのだ。
妹も双子なのだが、その姉のマリーが、かなり重い病気にかかっていた。
治すのには莫大な金が必要で、民間出身のハレルヤ達がその金を稼ごうとすれば、軍人にでもなるしかない。普通に働いていたら一生かかっても返しきれるものではなかった。
ちなみに双子の妹のソーマはハレルヤ達と同じく軍人になっている(止めたのだが、聞かなかった)。
ハレルヤ達の信用する数少ない存在───荒熊と呼ばれる男が上司なので、まだ安心だが。
と、突然アレルヤが、何か思い出したようにぽん、と手を打った。

「…あ、そういえば、エーカー大佐が来るって言ってたよ」
「は、」

突然の爆弾発言に驚く暇もなく────、

「やぁハレルヤ・ハプティズム!私の愛しい“翡翠”の姫に会ったというのは本当か!?」

ハレルヤの私室のドアを大破して、上司───グラハム・エーカーが入るなり叫んだ。
………さぁて何処から突っ込むべきか。







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