佐伯vs赤城
□遅れてきた・・・
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たしかに……たしかに、ちゃんとお前に気持ちを伝えなかったけどさ………
でも、まだ二人には時間がたくさんあると思っていたのに……!!
卒業式の後の海で、琴子に改めて友情を誓った。
俺としては、それは本心じゃなくて……
傷心の琴子に自分の気持ちを伝えるのは、なんだか卑怯な気がしたからだ。
進路が一緒なのはわかっていたし、いつか自分に振り向かせるつもりだった。
なのに………
なんでこんな奴が出て来るんだよ!?
「佐伯くん、紹介するね。こちらは、赤城一雪くん」
琴子に紹介された男は、俺の目から見てもかっこいい……ほうだ。
見るからに優等生だが、同級生だった氷上みたいな、近寄りがたい雰囲気はない
。
ってか、いやに優しい目でこいつのことみてるだろう……。
「赤城くん、一流だったんだね。すごい偶然!」
「君こそ。どこに行くのか気になってたんだ……」
おい……
なんか、妙に仲良くないか!?
しかも君って………や、俺も言ってたけどさ。
あらためて聞くとなんかキザ。
勝手に盛り上がっている二人に聞こえるよう、大きな咳ばらいをした。
「どうも、佐伯 瑛です」
「赤城 一雪です」
赤城は俺の顔を、穴があくほど見つめてきた。
「へぇ、聞いてた通りの人だね」
「聞いてた?」
「かっこよくて、頭もいい。はね学の王子って呼ばれてたんでしょ?」
「琴子、お前そんな話いつの間に」
俺が琴子に向き直ると、赤城はさりげなく間に入って来た。
「違うよ、はば学でも噂になってたんだ」
「すごいね佐伯くん、他の学校でも噂になってるんだ!!」
、と琴子が眼を輝かせる。
そういう目で見られるのはうれしいけど、今日はなんか複雑。
こいつ、俺の気持ちなんてわかってないんだろうな。
学部やら授業やらの話で、赤城と盛り上がっている。
俺を差し置いて。
突然、何か思い付いたらしく、琴子がポンと手を打った。
「そうだ!せっかくだから、みんなでお茶しに行こうよ」
「いいね、行こうか」
赤城が真っ先に賛成した。
なんでこいつ、俺より先に答えるんだよ。
見栄だか意地だか、つい答えられずにいると、琴子がこちらを振り向いた。
「佐伯くんも行こうよ。駅前にできたカフェ、すごく人気らしいよ?」
これは……高校のときに何度か誘われた文句じゃないか………
「お……おう、敵情視察だからな!」
二人の後ろから歩き出すと、すこし歩みを落とした赤城が並んで来た。
「……ライバル」
俺にしか聞こえない声でつぶやく。
赤城を見ると、俺を見てニヤリと笑った。
「でしょ?僕たち」
「なっ……だっ!!!」
「え?違うの??」
言葉が出なくて、とっさに睨み付ける。
「負けないよ?」
「……俺だって」
琴子の焦れた声が呼んでいる。
俺達の新しい時間は、始まったばかりだった。