神曲奏界ポリフォニカ〜手にした力の行方〜
□第二章
1ページ/1ページ
あの夜の事件、廊下や教室を一つ破壊する結果になったが誰もお咎めを受けることなく、無事に解決した。
フォロンもコーティカルテと契約を結び、というより結んでおり、その成果を考慮して無事に進級できることが決まった。
そして、フォロンやサラサははれて専門課程に進級していた。
「それじゃ、この後の時間は質問対応にするから、何か聞きたい人は私の所まで来なさい。」
少女がそう言うと、目の前に座っていた生徒達が数人立ち上がり少女の元へ向かった。
それに、一つ一つ丁寧に対応する。
はぁ、意外と疲れるわね授業ってのも・・・
慣れないことはするものではないと、改めて実感する。
専門課程に進級したことにより基礎課程の、つまりは後輩の指導を任されることになるのだ。
運が良いことにサラサが受け持った後輩は皆が真面目で、それぞれちゃんとした目的をもっているから、教える立場としてはやり易いことこの上ない。
今も静かに封音盤の扱いを、教えられた通りにやっていた。
「───後は、ここを調節すれば大丈夫よ」
「はい、ありがとうございます」
最後の子の質問に答えた時点で、ちょうど授業終了の合図が鳴る。
「それじゃ、各自忘れないように予習復習はするようにね」
決まり文句とも思える台詞をいって、担当が挨拶をしたのを確認すると教室を出ていった。
神曲学院の授業構成は午前の前半部、後半部と午後の部の三つで出来ており、今後半部が終わり最後の授業は───
「なぁ。今日って実習あるよな?」
「ひゃ!?」
突如背後から声をかけられ、普段の彼女には似つかわしくない声をあげてしまった。
「おいおい、お前でもそんな可愛らしい声出すんだな?」
わざとらしい声、顔はみえないが多分、いや絶対に笑っているに違いない。
顔を真っ赤にしながら、それを消すように咳払いをして、
「珍しいじゃない。こんな真っ昼間から出てくるなんてどうしたの?寂しくなった?」
振り返りながら嫌味たっぷりに返す。
「生憎昼は忙しい身でね。今日は偶々用事がなかったからきただけだ」
「あら、そう。てっきり仲間がいなくて、そこら辺でいじけてるのかと思ってたわ」
「ハッ 残念ながら長く生きてるから知り合いは多い方なんだよ。お前と違ってな」
「ふんっ 私は好き好んで一人でいるのよ。」
と、いつものように他愛ない口喧嘩をしながら二人は並んで歩く。
それを周りの生徒達は不思議そうに見ていた。
なぜ精霊がいるの?と、
いや、精霊がいること自体はそこまで不思議じゃない。実際ここは多くの神曲楽士を産出しているため、目ぼしい新人はいないかたまに精霊がやって来るのだ。
だが、問題なのはレインが背後に出している羽根の数
───六枚。上級精霊の証だ。
ただでさえ珍しい上級精霊が目の前にいて、しかも一人の少女と親しげに会話をしていれば嫌でも目立つ。
そこに、
「あ、サララ先輩!」
「あ、ペルセルテさん」
ユギリ姉妹とフォロンそしてその契約精霊であるコーティカルテが歩いてきた。
「やべっ」
レインがなぜか逃げようとするのでさっきのお返しにと捕まえる。精霊であるレインは物質化を解いてすぐにでも逃げれたが、小さくため息をついて諦めた。というより覚悟を決めたようだ。
「あ、今日はレインさんも一緒なんですね」
真っ先に近づいてきたペルセルテがレインに挨拶をする。その後ろではプリネシカとフォロンが小さくお辞儀をし、コーティカルテはレインを鋭く睨んでいた。
「よ、よう坊主。あの時以来だな」
「はい。あの時はお世話になりました」
あの時とはコーティカルテが暴走していた時のことで、あの日以来フォロンとレインは一度も会っていない。レインがフォロンをというよりコーティカルテを避けていたからなのだが。
「コーティカルテさんどうしたんですか?そんな怖い顔をして」
じっとレインを睨むコーティカルテにペルセルテが訊ねる。
「……いや、なんでもない」
今にも飛びかかりそうだったのにも関わらず、コーティカルテはすぐにレインから視線を外した。そのわけとしてはレインが誰にも見えないようにコーティカルテ以外の四角に『後で話す今は穏便に』と精霊雷で文字をつくっていたのだ。
ほっと胸を撫で下ろす。過去のことを考えればここでバトルなんてことになりかねないのだ。まぁ、そこは新しい契約楽士であるフォロンがいればあの『紅の殲滅者』も自重すると考えたのだ。
さて、どうしようかなぁ
一同が食堂に進むなかで少し離れた位置から考える。