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□熟華想 8
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認めたくないと、意固地になって目を逸らしてきたけれど。



あの初めて乱れた夜、彼に残された痕もいつの間にか消えていて。

たったひとつ彼が残した痕跡の意味を求める事すら、拒否された様な気分になって。





そうやって悲観的になる事が、彼への想いを断ち切れていないと物語っている。







彼と言葉を交わすたび、蓋をした気持ちが彼によって曝け出されていく。





彼の言葉を受け止める度軋む心が、認めたくないのに、まだ彼を欲していると自覚させられるようで。









自分で自分が儘ならない。































『熟華想』















彼に恋をし、彼を欲し、安直に彼を求めた私は愚かだった。



けれど、彼への想いをまだ腹の底で燻らせながら、心の中で彼を罵倒し、彼を否定し、彼の前で泣いた私の方が、遥かに滑稽で浅ましい。



彼を見て、欲情し、そんな気持ちに気付かれたくないと、自分の為に彼の手を払う私は酷く醜い。







その分彼も、泣き痕も痣も目に見えるもの全て、残してはくれなかったけれど。







こんなにぐしゃぐしゃにひしゃげた私を綺麗だと言ったセバスチャンは、やはり悪魔なのだろう。


















 
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