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□熟華想 3
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彼が、好きだった。
とても。
もう、一分の隙もないくらい、彼でいっぱいだった。
思考も心も眼も、耳も声も肌ですら、躯中で彼を求めてた。
彼が欲しかった。
思考も心も眼も、耳も声もその肌も、何もかもを独占したくてたまらなかった。
『熟華想』
「セバスチャン!良かった、ここにいたのね」
「名無しさんお嬢様…お呼び下さればすぐに向かいましたのに」
「あのね、今日なんだけど」
あの頃の私は、全身で彼を感じてた。
何気ない会話の節々に、自分を満たす要因を求めてた。
さり気なくを装って、幾度となく一緒に過ごす口実をこじつけて。
"お呼び下されば、すぐに"?
どうして?執事だから?
うん、分かってる、でも。
"もしかしたら、"
そんな浅はかなエゴを、全身で。
苦しいくらい全身で感じて。
もしかしたら、彼に恋する自分に酔っていたのかも知れない。