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『やっと…ついた。日本!ジャッポーネ!』

月も星も厚い雲に身を隠した光届かない街の中。
満面の笑みを浮かべた少年がそこにはいた。
彼は天に手を伸ばし背伸びをする。

『随分と嬉しそうだね』

彼の後ろを歩いてきたもうひとりの少年。
足音ひとつ聞こえないその場に、低くもなく高くもない落ち着いた声が響いた。

『ここに一度来てみたかったんだ』

『そう…それはよかったね雪兎』

雪兎と呼ばれた少年は頷いた後、止めていた足を一歩前へと踏み出した。
楽しくなりそうだ。
小さな笑い声とともに彼らは夜の闇へと消えていった。




【in 並盛とあるマンション】


『優羽ー!』

『どうした?』

優羽は読んでいた本にしおりを挟む。雪兎は実の兄の背後に回りそっと肩に顎を乗せた。

『どうしたじゃないよ。何でボクが並中なの!?』

ここは並盛のマンションの一室。
やたらと豪華で広くさらに窓から見る景色は格別だ。

『黒曜中が良かった?』

『そうじゃなくて!』

雪兎はクローゼットを開き優羽に2着の制服を突き出した。

『なんでボクと優羽は違う学校なのさ!!』

泣きそうなぐらいに眉を寄せ真新しい制服を抱きしめる弟の姿に兄は動じない。
静かに本をテーブルへと置き、鞄から真っ黒な表紙のシンプルな手帳を取り出した。

『確か…ボンゴレファミリー10代目沢田綱吉。そしてそのファミリーである山本武、獄寺隼人、笹川了平、雲雀恭弥が入るはずなんだけどな』

『…あのリボーンの生徒が?』

『そうだよ。雪兎にはそこで情報収集をしてほしいんだ』

『だったら優羽も並中でいいじゃん!てか優羽がいなきゃやだ。ボクはいかない』

必死になって言い寄る雪兎だが優羽は首を縦には振らない。

『それではダメだよ。黒曜にはあの六道骸がいるんだ』

『六道骸…』

『僕が黒曜で情報収集。六道骸は何を考えてるかわからない、だから僕が行く。いいね?』

実の目的は雪兎が僕から卒業してくれることなんだけどねと心の中だけで彼は言う。

『…うん…わかった』

雪兎は泣きながら優羽に抱きつき顔を肩へと埋めた。
兄弟はまるで双子だ。
身長はほとんど変わらず、髪型も声も微妙に違うぐらいで見分けるのは簡単ではない。
泣き虫な弟に苦笑しつつこれからどうなるのだろうと兄は思う。

『じゃ明日早いから寝ようか』

『寝ようか!』

灯りは消えると部屋は静寂に包まれた。



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