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『おはよう雪兎』

『おはよう優羽』

兄弟の朝は早い。
まだ登校時間まで随分と余裕があり、すでにテーブルには朝食が用意されていた。

『あーあ、やっぱり優羽がいないなんてつまんないんだけど』

『学校終わるまで我慢しなよ。僕らはいつでも会える』

『そーですけどね…何か納得いかない』

雪兎はココアを飲む優羽を見ていた。
部屋には甘い香りが広がっていくが、開けた窓の隙間に吸い込まれ消えてしまう。
すでに空っぽになったしまっている弟のマグカップの横に兄は半分入ったものを置いた。

『君もボンゴレの情報なら持っていて損はないだろう?あとリボーンには気をつけてね、せっかくの暇潰しが台無しになる』

『わかってる。力は使わないし発言も行動もつつしむよ。…でも』

『でも?』

急に黙りこんだ雪兎は不安そうな顔をする。

『変な人に気に入られちゃダメだから!』

『は?』

『優羽を取られたくない!綺麗だし優
しいしカッコイいし!変な奴が寄ってくるにきまってるでしょ!?』

『雪兎…僕たちの顔はそんな変わらないよ』

鏡の前に立ち兄弟は紫色に染まった片目に黒のカラコン入れそれぞれ制服着た。

優羽は黒曜中。
雪兎は並盛中。

ふたりはそれぞれ向かうべき場所へと歩き出した。





【in並盛中】

自己紹介も終わり既に時計の針は12を指していた。
ぼんやりと午前中を過ごしていたボクは欠伸をする。
クラスは沢田綱吉達と同じだ。
接近しやすいがどうしたものか。
正直この後のことはノープランだ。

「あ、あの雪兎君!もしよかったらお昼一緒にどうかな…?」

『…え?』

目の前にはあの沢田綱吉。
ターゲットがわざわざ誘ってきたことに驚いたがこれは好都合。
彼の後ろには山本武と獄寺隼人の姿があった。

仮にも10代目と呼ばれる彼の印象は薄かった。心配げに返答を待つ彼はまるで子犬だ。
殴り合いなんてしたことも考えたこともないくらい気弱そうで、これではただの弱そうな一般人だと正直思う。

『ありがと…うれしいな!』

取りあえず愛想笑いをして好印象を与えようと腹黒いことを考える。

「雪兎も来るのか?楽しくなりそうなのな!」

写真より爽やかだ、山本武が笑う。
でもやはりマフィアではなく間違いなく一般人だった。

「10代目こいつも来るんスか!?」

『お邪魔させて頂くよ』

10代目候補の自称右腕で犬のスモーキン・ボム。
目つきが悪く不良という身形。
情報通りなのだが牙を抜かれたようなその瞳に力はない。

「何でこいつが…」

スモーキン・ボム隼人はボクを睨みながら呟く。
別に敵意なんてどうでもいいが人前で10代目と彼を呼ぶ姿はボクには滑稽に映った。
その少なく確かな情報により危険のリスクを高めることになることに気づいてはいないのだろうか。
10代目の座を狙ってんのはまだまだいんだよ。

「気にしなくていいからね?」

『別に気にしてないよ、じゃーせっかくだし屋上案内してよ』

「勿論なのな」

それからボクは沢田綱吉達とともに屋上へと向かった。


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