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【in並盛中】

「今日は授業参観ということで、みんな緊張していることと思うが肩の力を抜いていつも通りの姿を見せればいい」

『じゃーサボリまーす』

「そ、それはいかんぞー?」

続々と集まりつつある保護者の姿を確認し教師はお決まりの気休めを言った。それならばと雪兎は席を立とうと背もたれに手をかけたが、教師は弱弱しくダメだと首をふる。
問題児である獄寺と対等に話し風紀委員として雲雀の近くにいる雪兎にはあまり強く当たれない、それがこの学校の教師の立場だ。

授業が始まり室内は静かになるが雪兎はつまらなそうに欠伸をしていた。じっとしているのは嫌いだ。そう思っていた彼はふと沢田に目を向けニヤリと笑った。

『沢田どーした?そわそわしちゃってさ』

「オレ母さんには来てほしくないんだよね…って言ってるそばから来ちゃったし…」

そう項垂れる彼の視線をたどると沢田に手を振るキレイな婦人がいた。

(こうやってみるとやっぱり沢田はおばさん似だよな。あのおっさんとは似てねーや)

実は沢田家のパパンを知っている雪兎はボンヤリと考えた後、沢田家のママンに手を振ってみる。するとにこやかに振り返してくれた。
隣で沢田が恥ずかしげにやめてくれと頭を抱えていたが気にしない。

「山本いってみるか?」

ふと気がつくと山本が数学の問題を当てられていた。黒板に書かれた白い数字と数式を見つめ
「ちぇ、いきなりかよー」と文句を言う。

沢田は何故かホッとしたようにマヌケな顔をしていた。どうやら沢田は数学が…いや勉強がダメらしい。

「んじゃ1/2あたりで」

ひらめいた!と言わんばかりに答えた彼に「コラ!またお前は当てずっぽうで…」と教師は続ける。

『それあってますよ』

「…ん?あ…正解か」

見事に感で正解した山本は「イエーイラッキー!」と喜びを見せる。それに合わせ『ナイス山本ー!』と声をかければ隣同士のハイタッチが行われる。
後ろからは山本の親父さんが寿司屋の服のまま「今夜は大トロだ!」と叫んでいた。

『大トロ…面白い親だな』

「今のはちょっと恥ずかしかったけどな」

「ところで雪兎君のとこは誰か来ないの?」

すると後ろの入口から長身で細身の黒いシルエットが現れた。
優雅な身のこなしと揺れる黒髪に誰もが見惚れまるで時が止まったように室内は静かになる。

だいたい24、5歳くらいの年齢に見える男性は雪兎の席の列の後ろで立ち止まった。

「…綺麗な人だね」

沢田はほんのり頬を朱に染める。それに満足したのか雪兎は自慢げに笑った。

『僕の兄さんだよ』

「すっげぇ…カッケーな」

雪兎が手を振ると変装した優羽は微笑んだ。
周りの婦人はその美しさに思わず立ち眩む、生徒達はすでに授業どころではなくなっていた。

「兄弟そろって美人か(オレなんか平凡中の平凡…なんかすごい友達を持った気がする)」

『僕でも兄さんは綺麗だと思うよ。残念なことにボクは綺麗じゃないけどね…どんなに褒めてもせいぜい中の下ってとこだし』

「「(鈍感だったんだ…雪兎って)」」

この時雪兎は気づいていなかった。
初日から雪兎のファンクラブがあるということを。
すでに隠し撮り生写真が女子の中で高値で売られているのだ。

「ったく、やってられねーぜ」

「ご…獄寺…私語はつつしまんか」

「けっ」

獄寺はあまりの授業のくだらなさとつまらさに愚痴をこぼした。
机に足をのっけて頭の後ろで手を組んでいる格好をしている。ちなみに獄寺の席は前列にあり雪兎達とは離れている。

それをいいことにどうせ聞こえはしないだろうと後ろにいる婦人数人が獄寺の態度に悪態をついていた。これだから不良は嫌だ、自分の子供に悪い影響を与える、親の顔がみてみたいなど言いたい放題だ。

(何あれむかつくな、そんな言い方しなくてもいいじゃん)

チラッと優羽をみると(落ち着いて下さいね)みたいな顔をしていたので取りあえず睨むだけに抑えた。


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