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「雪兎君明日授業参観だよ」

……………。

『えー!?』

沢田の知らせに雪兎は大声を上げてしまった。学校の帰り道を歩きながら深刻そうな面持ちで何を告げるかと思えばそれか!
ひとり騒ぐ雪兎に帰宅途中の生徒の視線は釘づけだ。

「急に大声あげんなよバカ!」

『るっせーな獄寺隼人!耳元で騒がないでくれる?あんたの方が大声だっつーの』

「いいや!テメーの方がはるかにうるせーよ!」

並中に通い初めてたった数日でクラスに溶け込み始めていた雪兎は獄寺とは仲が悪いんだか良いんだかよくわからない関係を築いていた。雲雀恭弥の前で猫を被ることに失敗し彼はクラスでも早々にあきらめていた。

「ハハハハ!仲いいのな」

『…山本と獄寺の組み合わせは最強だと思うけどな』

「けっ…誰がこんな奴。やっぱここはオレと10代目だっつーの!ですよね10代目!!」

「え!?いやオレは別に…」

『10代目って獄寺とそんなに仲良しさんなの?ねえ10代目?』

「なんかオレのことバカにしてる?楽しんでるよね雪兎君…」

沢田の素晴らしいところを語り出す獄寺は取り敢えず放置しておくことにした雪兎は落ち込む沢田を慰める。

『じゃ、また明日なー』
「おー」

「うん、また明日」

軽く手をふり雪兎はゆっくりと歩き出した。







『優羽ーーー!!!!』

『ん?』

バーン!そんな効果音がつきそうな勢いで開いたドアと叫び声。それに気が付いた優羽は顔を上げた。その瞬間タックルのような強い衝撃が全身を襲う。
雪兎は読書をしていた優羽に抱きついたのだ。その反動で本は優羽の手元から落ち音をたてた。

『どうしたんだい?』

『授業!いない!来てくれる!?でも嫌だ!!最悪だ!』

『明日は授業参観…でいいのかな』

流石は兄の優羽だ。解読できそうもない弟の言葉をなんとなくだが理解することができた。
雪兎の言いたいことはつまり、授業参観に来てくれる親なんてボク達にはいない。でも誰も来ないなんて嫌ということ。
何がそこまで最悪なのかはさすがに兄にもわからなかった。

『泣くな泣くな。僕がいくよ』

『本当に!?』

『大丈夫だよ。学校は休むし変装してくからさ』

変装と言っても幻覚で姿を変えるだけだ。身長や声、ありとあらゆるものを変えることができる。

『さっすが優羽!わかってる!!』

雪兎は嬉しそうに笑い自室へと戻っていった。
その姿に優羽は笑みを零して落としたままだった本を拾い上げる。

(アルコバレーノ…。本物を見ることになるとは楽しみだね)

優羽は静かに笑いまた本の続きを読み始めた。


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