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「やぁ」


『……………い…いらっしゃいませ』

扉を開けるとそこには雲雀がいました。雲雀は迷うことなくずかずかと部屋へ入っていきました。

(これってなんの嫌がらせだ!?)

雪兎は混乱しながら雲雀の後を追いかける。何故家の場所がバレてしまったのか、そして何故わざわざ来る必要性があったのか、迷惑極まりない行為に雪兎の愛想笑いは崩れる。

『ナンノヨウデスカネ?』

「赤ん坊が面白いものを見つけたっていうから来たんだ」

『そーですか』

恐るべし赤ん坊。雪兎はリボーンの顔を思い出して腹をたてる。
しかも雲雀はすでにリビングのソファーでくつろいでいる。実はその位置は自分の特等席だったりするので本当に嫌がらせのつもりかと疑いそうになる。
雪兎は取り敢えず紅茶を入れ雲雀に差し出した。

「ふぅん…やっぱりもう一人すんでるんだね」

『やっぱりってなんだよ』

雲雀は「別に」といった。雪兎は雲雀に優羽とあわせる気などなく、心のそこから帰ってほしいと願う。

いやむしろ帰れよあんた

しかし幸いなことに優羽は丁度出掛けているので雲雀との対面は避けることができた、と思ったのだが

『ただいまー』

この兄弟は本当に空気を読まない。

『来ては、ダメー!!』

「ん?」

雲雀は立ち上がり玄関の方へ行こうとするが雪兎がなんとか引き止め代わりに玄関へと向かう。
優羽は『誰かきてるの?』と黒い靴を見て言った。

『ダメ!もう一回でかけてき…「ねぇ、いつまで待たせるの?」』

『へー…友達かい?』

「…雪兎がふたり?」

『終わった…何もかも』







雲雀side

『初めまして雲雀君』

僕の目の前には雪兎とそっくりの彼がいる。でも何故?初めましてと言葉がでない。

「ふぅん。似てるね」

『まー…うん。兄弟だし…ね』

雪兎は目を泳がせながら答えた。そんなに僕と彼を会わせるのが嫌だったのだろうか、なんだかムカつくので次会ったら殴ろうと思う。

「名前は?」

『優羽』

「そう、一様覚えておいてあげるよ。…ねぇ…?それよりどこかであったことない?」

何を言ってるんだ、僕と優羽は初対面でしょ。
無意識に口から滑りこぼれていく言葉と声に久しぶり冷や汗が出た。

『あるわけないっしょ?優羽と雲雀なんてまさかー』

雪兎の言葉は当たり前だ。でも何故か気分が沈む。今の自分はどこかおかしい、自覚しているが理由も原因もわからない。

「そう…」

『どうかしました?』

優羽はどこか心配そうに言ったが僕はまともに顔を見れず首をふる。

「なんでもないよ」

『そーれーよーりー!どうして優羽は帰って来たのさ!!』

『ここは僕の家だよ、なんで帰ってはいけないんだい?』

雪兎は優羽の肩を揺すりながら『雲雀にあわせたくなかったー!!』と正直に、ほんとに正直だねキミ。

「それは残念だったね」

『いったいさっきからなんなの』

雪兎はいじけたように優羽にすり寄る。これはいったい誰だい?彼はこんなムカつく生き物だったかな。
別に関心があるわけでもないのにこの感情はなんなのだろうか、僕は心に渦巻く何かに問かける。

『…泣くなよ面倒くさいな』

そういいながらも子供をあやす様に弟の頭をなでる兄、そして甘える弟。

ムカつく。

『それじゃあ僕はもう一回出かけてくるよ、邪魔みたいだしね』

優羽は立ちあがり横を通り過ぎる。僕はとっさに優羽の手を掴んだ。



なんで?



『ゆっくりしていってね雲雀君』

そっと僕の手を外し優羽はそのまま出て行ってしまった。

その後ろ姿に一瞬なにかがダブる。それはあの彼の姿。



彼はいないんだ もういないんだ



そう僕は言い聞かせた。


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