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『イタリアに帰るよ』
『うん、ちょっと待って今財布持ってくる。…ん?イタリア…ってえー!?』
突如として帰国宣言された雪兎はひどく驚いたのだった。
【inイタリア】
『なんだよ…こーゆーことか』
夜の街の裏路地。ひんやりとした風と空気の通り道は薄暗くどこか寂しげだ。そんな中雪兎はホッとしたように笑う。
今回は久しぶりの本職でのお仕事だ。
『で、その内容は?』
優羽は資料を読みながら普段は見せない最高の笑みを浮かべていた。月明かりすら届かないこの場所で笑うその顔を雪兎は本当に美しいと思った。
『あるマフィアの抹殺。どこにも静かになんて書いてないし好き放題できるんじゃないかな。けっこー派手にやっちゃってもいいよ』
『ほんと?じゃあボク頑張っちゃうよ?』
今のふたりの格好は黒いロングコートに白い仮面。仕事用の正装だったため人目につきにくい。しかし白い仮面が闇の中に浮かんでいるように見えなんとも不気味だ。
「へぇー今回の共同任務ってmarionetteなんだ?すげーじゃん」
振り返るとそこには金髪の少年が立っていた。鈍く光り輝くティアラに優羽は目を細める。
今回の任務はとあるファミリーのマフィアの抹殺。ファミリー内でのトラブル処理のお手伝いと言ったところだ。
依頼人から念のためにと追加された人物を待っていたのだが正直ふたりで十分だと思っている。
しかし目の前に現れた存在に興味を示し優羽は考えるような仕草をした。
『君は確かプリンス・ザ・リッパー…ベルだったかな?あの暗殺部隊とは驚きだね』
「ししっ…marionetteに知られてるなんて光栄だね。確か変装ともに幻術と格闘の才能を持ってるんだって?」
『才能?それは大間違い。ボク達のはそんなもので片づけられるほどやさしいもんじゃない。…てか変装の才能って何?…変な噂流れちゃってんな』
そりゃないよと雪兎が肩を落とす。ベルはそんな彼を見て何を思ったのか手を伸ばし頭を撫でた。それに驚いたのか雪兎はその手を払い退ける。
『さ、触んな!と、とにかくさっさと任務やろうよ。ほら行くよ優羽!』
逃げるように兄の手を引く彼に、笑いながら後をついて行くベル。彼らの姿は完全に闇へと溶け込んでいった。
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