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誰もいない静かな公園。
そこに僕はひとりいた。
冷たい風と空気が傷だらけのこの身体を突き刺すようにボクを取り囲む。逃げても逃げても攻撃を緩めてくれることはなかった。
歩き疲れた、もう動けないよ
薄汚れた木製のベンチさえもたどりつけず、その横の土の上へと座り込み膝をかかえる。
痛かった。痛くて痛くて泣きたかった。
ここに来るまでに雪兎とはぐれてしまった。すごく悲しかった。
でも泣くことはできない、泣いたら余計に惨めだと知っていた。泣くな、言い聞かせ精一杯の強がりをしてみるが視界はぼやける。
寂しい。そう呟いた時だった。
「ねぇ…どうしたの?」
僕と彼は出会った。
「ねえ、聞いてる?」
初めて僕は話しかけられた。雪兎意外に話しかけられたことなんて今まで一度たりともなかった。
目の前には同じくらいの年の子供が立っていた。子供らしさのない切れ長の瞳にはボクはどんなふうに映っているのだろうか。
ただの好奇心か、それとも異物をみているのか。
『………』
なんて言えばいいのだろう?声がでず機能しない喉を両手で絞めるように掴む。
今のボクはこんな一般人の子供にすら恐れおののく生き物に成り下がってしまった。
このまま黙っていたら石を投げられるのだろうか、それとも蹴られたり殴られたりするのだろうか。
できれば何も言わず目の前から去ってほしい。
「…あちこち傷だらけだね。血がでてる、きなよ」
『…?』
僕はいつの間にか手を引かれ、足を引きずりながらも歩いていた。
どこに連れて行かれるのだろう、戸惑うボクは彼の後姿を見ていた。
しばらく歩くと見えてきたのは小奇麗なマンション、エレベーターに乗り込みぐんぐんと上に上がっていく。空が近くなってきたころ扉があき
「僕の家だよ」
彼はそういって手を引かれある一室へと入った。彼はただ呆然としている僕をイスへと座らせる。
『…!』
しかしほっと息をついた刹那顔へと伸びてきた手に驚きそれを叩き落とした。
ハッキリとした拒絶に彼はその手を見つめている。
しまった、叩かれる前に叩いてしまった。自分の行動に後悔したボクは身構える。
この後どうなるかなんて経験してきたことを思いだせばすぐわかることなんだ。
覚悟しているにも関わらす僕の目からは恐怖とともに涙があふれ出していた。
…とても惨めな気分でいっそのこと消えてしまいたい。
しかしそんな僕に彼は微笑んだ。
「大丈夫。何もしないよ?だから、泣かないでよ…」
僕よりも上手く感情がのった優しい言葉。叩くのではなく涙を拭うそのあたたかいぬくもり。僕は静かに頷いた。
そして彼は手際良く僕の傷だらけの腕に包帯を巻いていった。
足にも包帯を巻き、大きな青痣を見ては自分の痛みのように顔を歪めている。最後に頬に絆創膏を貼ってくれた。
『……ど…して、手当てしてくれたの…』
「なんだ、声でるじゃない」
その微笑みはどうして僕に向けられているのだろう。僕は彼が不思議でしょうがなかった。
見知らぬ他人にここまでしてくれるなんて有り得ない、その優しさは何?
『…君は…僕をたたかないの…?』
「叩く?どうして僕が君をたたくの」
『…敵じゃ…ない…?』
「うん」
全身の力が抜け落ち感じる浮遊感、そして僕はその場に倒れた。
薄れていく意識の中彼の声はとても慌てていて、なんだか少しそれがおかしかった。
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