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なんだかいつもより体が軽い。いつの間にか早足になっていたことに気づきながらもそのまま歩く。
一日動かず休息をとったおかげか、それとも兄が買ってきたチョコレートケーキか。
でも何よりこのテンポよく進む足が学校にいる沢田達に会いたいという気持ちを証明していた。

校舎が見え一層思いが高ぶり走り出す。しかし首根っこを掴まれ喉が一瞬で締まり勢いが止まった。

「風紀委員の仕事をサボろうとするなんていい度胸だね」

咳込むボクの胸倉を掴もうとしているのは雲雀恭弥だった。顔をみた瞬間に一気にテンションというものが下がるのを感じた。

『…今日なんかありましたっけ?』

「風紀の乱れは服装から」

周りを見渡せば黒いフランスパンや目つきの悪い不良が立っていた。
目が合うと皆が一斉に挨拶してくるのでボクの周りを歩いていた女子が恐怖心に駆られ逃げるように走り出す。なんだかこの間みた極道のドラマのようだ。
あの女子の中にクラスメートがいた、おかげさまで多分その子は一生ボクに話しかけてこないだろう。笑った顔が可愛い子だったのに残念だ。

「とりあえずネックレスもリングも校則違反で没収。ついでにそのだらしない顔も直したいんだけど生まれつきならしょうがないね」

『なにこの酷い言われよう』

しばらく教室には入れそうもないな。ボクは静かにため息を吐いた。







仕事を終え教室に入ると室内の雰囲気は凍えるように冷え切っていた。聞こえてくる会話はもちろん風紀委員が恐かったとかあれは最早イジメだとかトラウマになるとか、不安と嘆く声。
クラスメートがボクに気がつくと即静かになり自分が恐怖の対象になっていることがよくわかった。

「…あ、あの珀槻君、珀槻君は大丈夫だったの…?」

席に座り鞄を開けようとしていたボクに後ろから声がかかった。それはもう二度と声をかけてくれないと思っていた女子生徒、その後ろには更にふたりの女子生徒が怯えながらもこちらを見ている。

『大丈夫だよ、ボク君に嫌われたかと思ってた、だから今すごく嬉しいよ』

素直に嬉しく思い彼女の手を取って笑えば後ろからキャーと黄色い声があがった。朱に染め上げられた頬を見て大和撫子はなんて優しいのだろうと感動する。
静まり返っていた教室はいつもの温度を取り戻していて、皆からおはようと次々声をかけられた。

しかしその中に3人の聞き慣れ始めた声がない。
教室を見回したが獄寺に山本、そして沢田の姿はどこにもなかった。
まさかサボり?疑問を解決すべくボクは席を立つ。

『笹川さん、黒川さん』

こうなったら聞くしかないじゃないか、自分はあまり話したことはないが一番沢田と話したことがありそうな彼女たちのもとへと向かう。
3人同時に休むだなんておかしい。まさかボンゴレのマフィアとして何か動きがあったのだろうか。それならば早急に兄に連絡しなければならない。

「おはよう雪兎君!」

「珀槻が話しかけてくるなんて珍しいじゃん」

『ちょっと教えてほしいんだけど沢田達知らない?いつもならもう来てる頃だよな』

「え?みんな風邪みたいだよ?」

『…そうなんだ』

風邪。まさかの風邪。兄に連絡しなくていいことは確かだ。
深読みし過ぎていたためか少し事態を受け入れられない自分がいる。

「しっかしバカだよね〜あいつら。揃いも揃って風邪ひくなんてさ。いったい何があったんだか」

「でも心配だね」

『はは、そうだね』

頭によぎったのはボクが風邪をひいた時に3人が見舞いに来たこと。確実にそれが原因だ。
風邪って移すと治るのよ。そうドラマで言っていた御嬢と男達に呼ばれるヒロインを思い出し、これからもそのドラマを見ようと思った。
とにかくお見舞いにいかなくては。

学校を抜け出すことを決意したボクは裏門へと向かうことにした。
丁度今日の放課後は風紀の雑用の仕事はないのだ。
もう風紀委員に会わないことを祈り、店の集中する商店街に向かった。

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