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「やっと来たびょん!待ちくたびれたれすよ」
「…犬、うるさい」
「クフフ…お待ちしていましたよ」
『ああ、待たせて悪かったね』
暗く廃墟のような部屋に連れてこられた雪兎は混乱していた。
何故六道骸達がいるのか、それを平然として受け止めている優羽は何を知っているのか。
「雪兎…お久しぶりです」
『どういうこと…だよ?なんで…』
優羽は雪兎に落ち着くよう言い聞かせた。
彼らは敵ではない、仲間なのだ。
『いい?今からは落ち着いて話をよく聞くんだよ…』
どんなに苦しいことでも目を逸らしてはダメなんだ。
雪兎は静かに頷き優羽を真っ直ぐみた、すべてを覚悟したように。
『…嫌だっ!!もう聞きたくない!!こんなのなんか見たくない!!嫌だ、嫌だ!!』
来ルナ!
…来ルナ来ルナ来ルナァアア!!!
雪兎は頭を抱えて発狂していた。
狂ったように叫びつづけ恐怖におびえていた。
『…っ!雪兎』
優羽の声も届かない。しかしこのままでは雪兎が壊れてしまうのではないか。
目の前に広がるのは幼いころの記憶だ。実験台にされ死んでいく仲間の生々しい記憶が今色鮮やかに蘇る。
「…助ケ…っ!苦シ…。誰カ…殺シ…テ。…殺シテ…」
『嫌だ、もうやめろ!もうこんなの、こんなの知りたくない!!』
骸と優羽によって作り出された幻覚の世界で雪兎に手を伸ばす血に塗れた子供。
幻覚なのに吐き気がするほどリアルだった。鉄と医療品の臭いが混ざり合い嗅覚を麻痺させる。
『ここは…』
次の瞬間場面が変わる。そこは反抗する子供たちが押し込められていた狭い部屋だ。まるで檻のように閉鎖された空間、そこにひとり少年が立っていた。
ぼろぼろの雑巾のような継ぎ接ぎだらけの布を身にまとい、こちらに絶望した顔を見せている。
「…死にたくない、嫌だ!助けて、助けて!…雪兎っ…」
『…おまえ…は…』
知り合いだったのか、名前を呼ばれた雪兎は震える足で近寄る。
「…でももう無理だ」
『え?』
「オレもう、死んでんだ」
ぐしゃって潰れた目玉を大事に握っていた少年は涙の代わりに大量の血を溢れさせ顔を濡らした。
『……なんなの…?』
その場に膝をつき低くなった目線から消えていく少年を見て雪兎は呟いた。
その弱々しい姿に耐えられなくなった骸はそっと彼を抱きしめるが雪兎は腕の中で暴れる。
『放せ、…もうこんなの嫌だ!ボクは死にたくない!死にたくない!あんな死にかた…絶対嫌だ!!』
「君は死ななくていい」
『殺すつもりなんだろ!?だったら早く殺してよ!いらないんだろ!?』
「いらなくなんてない、僕には君が必要です」
『……』
「ひとりにしません、君には僕がいる」
雪兎は次第に動かなくなり骸にもたれかかるように眠りについた。
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