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『雪』
優羽は窓から外を見ていた。
外はすでに白銀の世界と化しているのがよくわかった。静かであたたかい部屋の中だが窓際は少し寒い。
『そうだね、ここは四季ってのがあって面白いな』
雪兎はホットココアを飲みながら嬉しそうに笑う。
ふたりは雪が好きだった。
冷たくて優しくて、何にも邪魔されないまま純白な世界をつくり続ける雪が大好きだった
。
『ねぇ…聞いていい?』
雪兎の表情の読めない声に反応した優羽は窓の外を見つめたまま静かに言った。
『いいよ』
雪兎は優羽に視線を向けずに頷く。
『僕は人間、マフィアが大嫌いだよね』
『そうだね、ボクも大嫌いさ』
即答された言葉にホッと息をつく。
そんなの当たり前だと雪兎は思ったが、何故自分はこれほどまでにマフィアを嫌うのかわからなかった。
逆に自分に対する不快感と疑心、恐れを抱く。
『何で嫌いだと思う?』
優羽の問いかけに曖昧にしか答えられない。
『…わかんない。気がついたら嫌いだったけど…優羽は?』
兄はどうなのだろうか。きっと兄に聞けばわかる、そう感じた。
『知りたいかい?』
『知りたいよ』
『そう…じゃあ行こうか』
『何処へ?』
雪兎は振り向き首を傾げた。
『黒曜へ』
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