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『おはよ…優羽』
『うん、おはよ雪兎』
あれから雪兎は落ち着きを取り戻していた。
最初は犬達とはぎこちなく話していたようだったが今ではお互いに心を許し仲間意識が高くなっていた。
そもそも雪兎が記憶をなくしていただけで犬達とはもともと仲がよかった。それだけに優羽はほとんど心配はしていなかった。
意識を取り戻した瞬間顔を覗き込んでいた骸に強烈なパンチが飛んだのはいうまでもない。
『優羽はいつから記憶が戻ったの?』
『んーまあ、黒曜中から帰ったあとかな。ちょっとした調べ物してる最中に』
『そーかー…って大丈夫だったわけ!?』
『何が?』
『何が?じゃなくてほら精神的にとか!!もう!首傾げちゃって可愛いな!!』
『…今生きてるから結果オーライでしょ』
『いや、結果オーライとかそーゆー問題じゃないから!!てかボクに内緒で何を調べてたの浮気!?』
『何時にもましてウザいね』
『どこらへんが?』
『もちろん言動が。でもなんか表情豊かで明るくなった気がするよ、お兄ちゃん嬉しい』
『ちょ、止めて、微笑まないで、なんか出そう、ティッシュ!ティーッシュ!』
『……』
ふたりは過去の記憶を取り戻したことにより自分が何者だったのかを思い出し緊張感が少し薄れていた。
だがふたりにはまだまだ大きな問題を精神的にも肉体的にも抱えているため、人との境界線や警戒などは少しも変わらない…はず。
『…雪兎はその方がいいな、変わらないでね』
『それはどういう意味?ボクはもっと過激に愛情表現したい』
『うん、お断りするよ』
最近はよく笑う。弟が笑うようになったのは学校というもののおかげか、それとも骸達のような本当の仲間に出会えたことか理由はわからない。
ここにきてきっと何かが変わる、優羽は読んでいた本のページをめくる。
PiPiPiPiPi…
『誰?』
突然優羽の携帯が鳴りだした。
だが携帯に登録されてる人物は骸達とここにいる雪兎しかいないのだから必然的に骸達になる。
しかし、携帯には非通知を知らせる文字があった。
『…どちら様かな?』
「ちゃおっス」
『現在この番号は使われておりません、電話番号をお確かめに「落ち着け」…ちょっとしたおちゃめだよ。やあ、ごきげんよう』
電話の相手はリボーンだった。住処も携帯もバレてしまうとは流石に調べられていることが嫌でも再確認ができる。
『誰から?』
『リボーンだ』
『わー…流石アルコバレーノ…』
「雪兎もいるようだな」
リボーンは少し嬉しそうに言った。だがリボーンからわざわざ電話など何か裏があるはず。
『それより要件は何?どうせろくなことじゃないんだろ』
「雪合戦やってるからこい」
『雪合戦ってなに?雪兎知ってる?』
『知らなーい』
「来ればわかるぞ遊びだ」
『『遊び?』』
ふたりの好奇心が疼き始めた瞬間だ。ふたりにとって遊ぶことは憧れだった。
「学校にいるぞ」
そこで電話は切れた。ふたりは直ぐにお揃いの黒いマフラーと手袋を着用して外へと飛び出していった。
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