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「ありっこねーー!!」

すると人だかりの出来ている出店から叫び声が聞こえた。

『射的?え、日本の祭りって人殺していいの?』

「それは射殺です。射的は空気銃にコルクの弾を詰め的にあてたり景品を落とす遊びですよ」

『へえ…』

「そう言えば雪兎はこういったたぐいのものは初めてでしたね」

『うん、珍しくて面白いよ』

骸も似たようなものだが特に雪兎は一般人のイベントや遊びは知らなかった。そしてこれが日本にきて、否人生で初めての祭りとなる。

「おや、赤ん坊ですか?」

『は?赤ん坊?』

射的をやっている人物はアルコバレーノ、リボーンだった。
アルコバレーノがいるということは沢田綱吉もいるはず、おそらく獄寺達も一緒だ。

しかし無闇に口に出せば骸が何かを仕掛けるのではと思考を一時停止させる。

「クフフ、まさかこんな所にアルコバレーノがいるとは驚きました」

しかし驚いた様子は微塵もない。雪兎には骸が何を考えているのか全くよめなかった。
そう言えば骸達は何故日本にきたのだろうか。もしかしたら自分たちと同じくボンゴレの情報を掴みやってきたのかもしれない。

周辺を見渡すと沢田が慌てたようにリボーンから離れて行ったのが見えた。

しかし大丈夫だと確信が彼にはあった。なんせボンゴレ10代目候補となる男は素人だ。骸に目をつけられることなどない。

…何故自分は彼らの心配をしてしまったのだろうか、今更になって後悔する。あれはただの暇つぶしだ、どうなったっていいじゃないか。

『…っつーか優羽!?』

ゆっくりすれ違った少年を見て雪兎が声を上げた瞬間足音がピタリと止まる。

『やあ…雪兎は可愛らしくなっちゃったね』

「クフフ…この方が何かと動きやすいのでね。あと、どうしても浴衣が着たいと言うので選び抜きましたよ」

『おいコラふざけんな!ボクは動きにくい!!』

「楽しんでたじゃないですか」

『バレたら嫌なだけ!!ボクは女装趣味なんてないっつーの』

楽しそうなふたりを見て優羽はクスっと笑う。

「ところで優羽は何故ここに?」

『あと何だよそれ?一瞬誰だかわかんなかったじゃん。つーか素顔もカッコイいけどそれもカッコイい!もう大好き!』

今の優羽はというと、服装はいつもと変わらないものの顔と身長が違う。

もちろん変装なのだが強い幻覚がかかっているらしく骸と雪兎以外には優羽だとわからないだろう。
金髪の髪が美しく風に舞う。

『ハッ!今ボク女の子だから優羽といちゃいちゃ出来る!!優羽デートして!』

『調べものが早く終わったんだよ。だからよった』

『え、無視?だったら3人で一緒に…』

『それもパスかな』

優羽は骸の顔を見てクスっと笑ったあと人ごみに消えて行ってしまった。
残された雪兎は落ち込んだように骸の服の袖をぎゅっと掴み俯く。

「(本当に優羽が羨ましいですね…。それにしても、この行動は無意識なのでしょうか?……ちょっとぐっときます)」

骸は片手で目を隠すように覆った。

『?、顔紅いよ』

「黙りなさい。…知っています」

誰のせいだと思ってるんですか貴方は…。そう心の中で呟くが全く気がついていないのか雪兎は首をかしげていた。

『ふぅ…優羽いないけど、楽しまなくちゃダメだよな、ボク林檎アメ欲しい!買え』

「クフフ…本当にお子様ですね。慌てなくても大丈夫ですよ」

『どーせお子様ですよー、いいから林檎アメ』

優羽がいないのは寂しい。でも骸がいるとその寂しさは半減する。

誰もがふたりの美しさに振り向き、そして誰もが無邪気に笑う雪兎に魅入っていた。その姿は天使そのもの。

だれも運命に踊らされ続ける操り人形だとは気づかないままだ。

しかし幸せはのちに音を立てて崩れていくだろう。


その時まで…

しばしの休息を…。


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