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その頃ふたりと別れてきた優羽は人混みの中を彷徨いていた。

祭りと言っても何が面白いのか理解出来ない、見物といっても何を見たらいいのか全くわからない。

最初は興味本位で来てみたのだがこうも人が多いと居心地が悪い。もう帰ろうかと来た道を戻ろうと思った。

しかし折角きたのだ、もしかしたらもう二度と来ないかもしれない。その思考が優羽をとどまらせていた。


僕には…ここは似合わない


幸せそうに笑う声、柔らかい表情。今まで生きてきた場所とは異なり過ぎているのだ。


「ヒッヒバリさんー!?」

ふと聞こえた声に目を向けると沢田綱吉がいた。他にも獄寺に山本がいる。
どうやら彼らは店を出しているらしい。

隣をみると風紀委員により出店が潰されているのが見えた。ここでも風紀委員が出てくるのかと思わず笑ってしまう。

だがそんな風景も自分の中で霞んでいくのがわかった。
最近は仕事もあまり引き受けていない。ここには手応えのある相手もいない。

今までは毎日のように邪魔なマフィアを消してきたのだ、こんな平和ボケしたような場所は初めてだった。

自分でも体が要求しているのがわかる。

血と断末魔を禁断症状のように求めている。

しかし雪兎に心配をかけるため暴れられない。いつも取り繕った自分を作らなければならない。

頭が可笑しくなりそうだ。

抑えられない衝動に苛立つ優羽は深呼吸するが視界に入れてしまった姿と声に思わず舌打ちをした。
どうやら沢田綱吉をみているとどうも冷静ではいられなくなる、弱々しい姿が無知で弱い自分自身と重なる。

沢田に非があるわけではないのに僕は自分への苛立ちを勝手に沢田に押し付けてる、そう思うほどに優羽は自分に嫌悪感を抱いた。


ふと何かに気がつく。沢田達の後ろに隠れるように揺れる影。少年のようだがずっと様子をうかがっているが動こうとはしない。

彼の狙いは何だろうと沢田の出店を見ていたが優羽は少し楽しそうに唇の先を釣り上げて笑った。

少しぐらいいいよね。

我慢の限界だとでも言うように目を細める。
周りから見ればまるで飢えた獣のような禍々しさがあった。

幻覚と変装をすべてそのまま。

ふらっと気が向くままに優羽は歩き始めた。

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